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税理士・社労士がChatGPTに顧客データを見せてもいいのか

こんにちは、コマルです。「顧問先の決算書、ChatGPTに貼って要約させてもいいのかな」——税理士・社労士の方から、この手の相談をよく受けます。結論を先に、チャートで見せます。次の3つの問いをたどれば、今入れようとしている内容が「入れていい」側か「控えるべき」側か、その場で見当がつきます。

入力しようとしている内容顧問先の決算書・給与データなど

Q1 顧客(本人・会社)を特定できる情報が含まれているか

社名・氏名・具体的な数字の組み合わせなど

いいえ

守秘義務の論点ではない

条文の解釈・雛形作成などの一般的な相談はしてよい

はい

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Q2 入力先のAIは、学習に使わない設定になっているか

法人向けプラン・学習オフの設定など

いいえ

秘密を外部へ渡すことになりやすい→入力しない

無料版・初期設定のままだと入力内容が学習に使われうる

はい

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Q3 この使い方を、顧問先に説明できるか

契約書に一文がある/聞かれたら答えられる

いいえ

先に契約への一文か説明を用意する

「正当な理由」を後から説明できない状態は避ける

はい

現時点の判断としては入力してよい

設定・記録の見直しは定期的に

図1顧問先のデータをAIに入力してよいかを、3つの問いでたどる判断チャート。税理士法38条・社会保険労務士法21条の守秘義務をもとに整理。

先に断っておくと、この話は個人情報保護法だけの論点ではありません。個人情報保護法が対象にするのは「個人を特定できる情報」ですが、税理士・社労士に課された守秘義務はもっと範囲が広く、法人の決算内容や取引先の情報のように、個人情報にあたらない秘密も対象になります。守秘義務は「AIだから特別に生まれる義務」ではなく、もともと持っている「業務上知った秘密を外に漏らすな」という義務の一種だと考えると、判断がぶれません。

Q1:顧客を特定できる情報が含まれているか

マル

最初の分かれ道だね。「顧客を特定できる」って、具体的にどこからがそうなるの?

タイガー

社名や個人名がそのまま入っていなくても、数字の組み合わせで特定できてしまえば対象になるよ。例えば「従業員12名、年商○億円、△△市の建設業」まで書けば、地域によっては1社に絞り込めてしまう。名前を伏せたつもりでも危ないケースがあるんだ。

マル

じゃあ「税理士って副業の申告、どこまで経費にできるんですか」みたいな一般論の質問は?

タイガー

それは対象外。顧客の具体的な数字や固有名詞を伴わない、制度や条文についての一般的な質問はここで止まる。次の問いに進む必要もなく、そのまま相談して大丈夫だよ。

「顧客を特定できる」かの目安

  • 社名・氏名がなくても、業種・地域・数字の組み合わせで絞り込めれば対象になりうる
  • 制度や条文についての一般論の質問は、ここで対象外になる
  • 迷ったら「これで顧問先が誰か分かってしまうか」で判断する

Q2:入力先のAIは、学習に使わない設定になっているか

顧客を特定できる情報が含まれる場合、次に見るのはAIサービス側の設定です。無料版や個人向けプランは、初期設定のままだと入力内容が学習に使われうる仕組みになっています。法人向けプラン(Business・Enterprise等)に切り替える、または個人向けでも学習オフの設定にすれば、入力内容が外部のAI提供者側の学習に回ることは避けられます。具体的な操作手順は「学習させない」設定の手順にまとめました。

マル

うちの事務所、みんな無料版のままだった……。この状態で顧問先の話をしちゃうと危ないんだね。

タイガー

そうだね。学習に使われる設定のまま顧客の秘密を入力すると、事務所の外にいるAI提供者に秘密を渡したのと同じ状態になりかねない。まずは今使っている設定を確認するところから始めよう。

学習設定の見分け方

  • 無料版・個人向けプランは初期設定で学習に使われうる
  • 法人向けプラン、または学習オフの設定なら、外部への流出リスクは下がる
  • 「うちは大丈夫」と思い込まず、実際の設定画面で確認する

Q3:この使い方を、顧問先に説明できるか

設定を学習オフにできても、それだけで安心とは言い切れません。税理士法38条・社労士法21条が守秘義務の例外として認めているのは「正当な理由」がある場合です。顧問先の同意や、契約書に基づく合理的な説明ができる状態は、この「正当な理由」に近づきます。逆に、契約に何も書かれておらず、聞かれても答えられない使い方は、あとから問題になったときに説明のしようがありません。業務委託契約書にAI利用の一文を足す考え方は、お客さんの情報を扱う契約書に、AI利用の一文を足すならで扱っています。

マル

顧問契約書、そういえばAIのことなんて一言も書いてないや……。

タイガー

今すぐ書き換えなくても大丈夫。まずは「聞かれたら説明できる状態」を作ることが先決。次の契約更新のタイミングで一文を足せば十分だよ。

Q3で確認すること

  • 守秘義務の例外は「正当な理由」がある場合
  • 顧問先の同意・契約上の説明があれば、正当な理由に近づく
  • 契約に記載がなくても、まずは聞かれたら答えられる状態を作る

守秘義務の中身——税理士法38条・社会保険労務士法21条

ここまでの3問の前提になっている条文を、原文で確認しておきます。税理士法第38条はこう定めています。

税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。

社会保険労務士法第21条も、ほぼ同じ構造です。

開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなつた後においても、また同様とする。

いずれも「秘密」の対象を個人情報に限定していません。法人の決算内容や経営状況も、業務上知り得た秘密であれば対象です。違反した場合の罰則も定められていて、税理士法38条違反は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第59条。この罪は顧問先からの告訴がなければ起訴されません)、社労士法21条違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第32条の2)です。資格を失った後も義務が続く点も共通しています。

守秘義務の条文(一次情報)

  • 税理士法38条:業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らし・窃用してはならない(資格喪失後も継続)
  • 社労士法21条:業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らし・盗用してはならない(資格喪失後も継続)
  • 違反時の罰則:税理士法38条=2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(親告罪)、社労士法21条=1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

例外——使ってよいと言えそうなケース

3つの問いの答え方によって、実際にどう変わるかを表にしておきます。

○ していい例
  • ・一般的な税法・社会保険の条文解釈をAIに聞く
  • ・「A社」「30代・個人事業主」のように匿名化した相談
  • ・顧問契約の案内文・お知らせ文の下書き
  • ・学習に使わない設定+契約に一文がある状態での分析相談

顧客を特定できる情報を含まない、または外部に渡らない設定にした状態

× 控えるべき例
  • ・顧問先の決算書・給与明細をそのまま貼って要約させる
  • ・従業員の氏名付き社会保険手続きデータを入力する
  • ・無料版の初期設定のまま顧客の相談内容を入力する
  • ・契約に記載がなく、聞かれても説明できない使い方

「正当な理由」を説明できない状態での入力

図2していい例/控えるべき例の線引き。顧客を特定できるかどうかと、AIの設定・契約上の説明の有無で分かれる。

マル

結局、顧問先の話は全部AIに入れちゃダメってこと?

タイガー

そこまでは言い切れないよ。社名や数字を「A社」「30代・個人事業主」のように記号化すれば、秘密を渡さずに相談できる。条文の解釈や書類の雛形作りなら、この工夫だけでほとんど困らないはずだよ。

マル

記号化さえすれば、もう安心?

タイガー

過信は禁物。うっかり別の相談で本名のまま入力してしまう、というヒューマンエラーは残るからね。だから「入れない情報を決める」のと、事務所全体でその決め事を共有するのをセットで考えてほしい。

Comaruの実務ではこう判断している

Comaruでは、士業の顧問先からAI活用の相談を受けるとき、決算書や給与データそのものを預かって解析するような使い方はしません。相談段階では固有名詞を「A社」「Bさん」に置き換え、どうしても実データが必要な作業は、学習に使わない設定にした上で、事前にその使い方を顧問先へ説明し、了承を得てから進めるようにしています。

マル

説明して了承を得るのって、毎回手間じゃない?

タイガー

最初の一回だけ丁寧にやれば十分だよ。「こういう作業でAIを使う、こういう設定にしている」と一度説明しておけば、次からは確認の手間がぐっと減る。あとで「聞いてない」と言われるリスクを考えたら、最初の説明にかける時間は安いものだよ。

まとめ:守秘義務は「AIだから」ではなく「外に漏らすな」の一種

税理士・社労士がChatGPTに顧客データを入れてよいかは、①顧客を特定できる情報が含まれるか、②入力先のAIが学習に使わない設定か、③その使い方を顧問先に説明できるか——この3つで機械的に判断できます。特別な事情がない限り、①はい・②いいえ・③説明できない、という組み合わせは避けるべきです。

守秘義務は生成AIが登場する前からある古い義務で、対象は個人情報に限りません。法人の情報も、業務上知った秘密であれば同じように守る必要があります。「AIだから特別に気をつける」のではなく、これまで紙やメールでも守ってきた「外部に漏らさない」というルールを、AIという新しい道具にもそのまま当てはめる、と考えると判断に迷いません。

顧客を特定できる情報とそうでない情報の切り分け方は個人情報保護法とAIの入力、記帳や経理業務でAIをどこまで使えるかは記帳のどこまでAIに任せていい?、無料版のまま使うなら最初にやるべき設定変更は「学習させない」設定の手順、契約書への一文の足し方は業務委託契約書にAI利用の一文を足すならを参考にしてください。

30分無料相談では、今の事務所の使い方を伺ったうえで、どこまでAIに任せて、どこから顧問先への説明が必要かを、実際の業務に合わせて一緒に整理できます。


参考(一次情報):e-Gov法令検索 税理士法/e-Gov法令検索 社会保険労務士法

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・法令は改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。