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記帳のどこまでAIに任せていい?税理士に見せる前の下ごしらえ

こんにちは、コマルです。先に答えを書きます。領収書の整理と仕訳の下書きは、AIに任せて構いません。勘定科目の最終判断は人が、申告そのものは税理士の領域です。「記帳、どこまでAIに頼っていいの?」——経理の相談でほぼ毎回出てくるこの問いに、工程を4つに分けて答えていきます。

①領収書の整理AIにほぼ全部任せてOK
AIがやること
撮影・読み取り・仕訳候補の作成まで
人がやること
読み取りミス・二重登録の確認だけ
②仕訳の下書きAIが下書き・人が確認
AIがやること
過去のパターンから勘定科目を自動提案
人がやること
登録前に金額と科目の組み合わせを確認
③勘定科目の判断AI候補→迷ったら税理士
AIがやること
候補をいくつか提示するところまで
人・税理士
割れやすい科目は顧問税理士に確認
④申告ここは税理士の領域
自分がやること
下ごしらえした帳簿を渡すところまで
税理士がやること
税務代理・書類作成・税務相談は独占業務

出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」「税理士制度のQ&A」(税理士法第2条・第52条)をもとにComaruが整理(2026年9月時点)。工程が進むほどAIの役割は「候補出し」までにとどまり、最終判断は人・税理士に移る。

図1記帳の4つの工程(領収書の整理・仕訳の下書き・勘定科目の判断・申告)ごとに、AIと人・税理士の役割を整理した比較。

こうして並べると、AIが得意なのは「入口」側の作業で、工程が進むほど人と税理士の出番が増えていくのが分かります。ここから、工程ごとに何が変わるのかを順番に見ていきます。

入口に近い工程ほど機械的な処理で済み、出口に近づくほど「会社の状況を踏まえた判断」が必要になります。記帳をAIに任せる・任せないでひとまとめに悩んでしまうのは、この移り変わりを分けずに考えてしまうからです。

領収書の整理——ここは全部AIに任せていい

マル

領収書の山を前に、毎回ため息をついてるんだけど……これって全部AIにやらせちゃっていいの?

タイガー

この工程は、いちばんAIに向いている作業だよ。スマホで撮影するだけで日付・金額・取引先を読み取って、仕訳の候補まで作ってくれる。人がやるのは、読み取りミスや二重登録がないかをざっと見るだけでいい。

2024年1月から、メールやクラウドサービスでやり取りした請求書・領収書などの「電子取引データ」は、紙に印刷して保存することが認められなくなり、電子データのまま保存することが義務になりました(国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。紙の領収書もスキャンして電子化しておけば、あとの仕訳の下書きまでひと続きでAIに読み込ませられます。ここは思い切ってAIに任せてしまってよい工程です。

紙で受け取った領収書も、スマホのカメラで撮ってその日のうちにアップロードする習慣をつけるだけで、月末にまとめて処理する手間がなくなります。ため込むほど読み取りの見落としも増えるので、こまめに回すほうが結局早く終わります。

領収書の整理を「誰がやるか」も、地味だけど決めておきたいポイントです。担当を1人に固定せず、部署ごとにその場でスマホから送ってもらう運用にすると、月末に1人だけが抱え込む状態を避けられます。

仕訳の下書き——AIが下書き、人が確認する

マル

じゃあ次の「仕訳」も、同じ調子でAIに任せていいのかな?

タイガー

下書きまでは任せていいよ。ただし、任せ方が2種類あることは知っておいて。ひとつはChatGPTのような汎用AIに「この取引の仕訳を考えて」と相談するやり方。もうひとつは、freeeやマネーフォワードのような経理ソフトに最初から入っているAI機能を使うやり方。後者は口座やカードの明細を読み込むと、過去の登録パターンから勘定科目を自動提案してくれて、使うほど精度が上がっていく仕組みになっている(2026年8月時点、両社の公式サイトで確認)。

汎用AIは「初めて扱う特殊な取引をどう仕訳すればいいか、考え方を相談する」場面に向いています。一方で経理ソフトのAI機能は「日々の定型的な取引を、毎回同じ判断で流す」場面に強いという役割の違いがあります。どちらを使うにしても、AIが出した仕訳案をそのまま登録せず、金額と勘定科目の組み合わせが不自然でないかを人が1件ずつ確認する、という手順は変わりません。

マル

うちみたいに、経理ソフトをまだ入れてない会社はどうしたらいいの?

タイガー

その場合はまず汎用AIで十分。件数がまだ少ないうちは、明細を見ながら「この取引の仕訳を考えて」と相談する運用で回るよ。取引の件数が増えて自動化したくなったタイミングで、専用の経理ソフトへの乗り換えを検討すればいい。

仕訳AIを使うときに崩さない手順

  • 汎用AI(相談向き)と経理ソフトのAI機能(定型処理向き)は役割が違う。使い分ける
  • どちらの提案も「登録」ボタンを押す前に、金額と勘定科目の組み合わせを人が見る
  • 迷う取引ほど、提案をそのまま採用せず理由まで確認する

経理ソフトを選ぶときは、料金や画面の使いやすさだけでなく、AIによる仕訳提案の精度がどれくらい高いかも比較の材料にしてみてください。日々の下ごしらえにかかる時間が、そこでかなり変わってきます。

勘定科目の判断——AIは候補まで、決めるのは人と税理士

マル

交際費にするか会議費にするか、いつも迷うんだけど……こういうのもAIに聞けばいいの?

タイガー

候補を出してもらうところまでは有効。でも判断が割れやすい科目は、AIの答えを鵜呑みにしないほうがいい。交際費と会議費、修繕費と資本的支出みたいに、金額や状況次第で扱いが変わる科目は、税務調査で指摘が入りやすい代表例なんだ。自己判断で決め切らず、顧問税理士に「この基準で合っているか」を確認する工程を挟むのが安全だよ。

AIはもっともらしい理由をつけて科目を提案してくれますが、その理由が今の税制や自社の状況に照らして正しいとは限りません。過去の判断や社内ルールをAIが知っているわけではないからです。勘定科目の最終判断は、AIの候補を材料にしながらも、人(できれば顧問税理士)が下す、という順番を崩さないようにしてください。

Comaruでは記帳に経理ソフトを使っていますが、交際費か会議費かで迷うような支出は、1件ずつ聞かず、月次の帳簿確認のタイミングでまとめて顧問税理士に相談するようにしています。迷った取引に一言メモを残しておくだけで、あとから振り返って確認しやすくなります。

申告——ここだけは税理士法が線を引いている

マル

じゃあ最後の申告も、AIに手伝ってもらうところまでは自由にやっていいんだよね?

タイガー

下ごしらえとしてAIを使うのは自由だよ。でも申告書の作成そのものを、他人(他社)の代わりに仕事として行えるのは税理士だけ、と法律で決まっているんだ。国税庁の説明ではこう整理されている。

税理士法第52条は、こう定めています。

税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

ここでいう「税理士業務」とは、①税務官公署への申告等を代理する「税務代理」、②申告書等を自分の判断で作成する「税務書類の作成」、③税額計算などの相談に応じる「税務相談」の3つです(国税庁「税理士法違反行為」Q&A)。違反すると2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。

マル

自分の会社の申告を、自分たちでAIを使いながら作るのもダメってこと?

タイガー

そこは大丈夫。この規定が対象にしているのは「他人の求めに応じ、業として」行う場合。自社の申告を自社の判断で進めるのは、AIを道具として使っていても問題にならない。危ないのは、無資格の代行業者やツールに「申告書の作成」や「税務相談」まで丸ごと肩代わりさせてしまうケースだよ。

税理士法が線を引いているのは「他人の申告を業として代行すること」

  • 税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つは、税理士(法人)の独占業務
  • 自社の申告を自社の判断で進める分には、AIを使っても問題にならない
  • 危ないのは、無資格の代行サービスやツールに判断ごと丸投げすること

記帳代行を外部に依頼している場合は、依頼先が税理士(または税理士法人)かどうかも、契約前に確認しておくと安心です。AIを使った便利なツールという触れ込みでも、申告書の作成や税務相談まで請け負っているなら、その部分は税理士でなければ本来できない業務にあたります。

税理士が決まっていない状態のまま申告の時期を迎えてしまうと、勘定科目の付け替えが後から必要になり、かえって時間がかかることもあります。早い段階で顧問税理士の候補を探し始めておくと、直前になって慌てずに済みます。

あなたはこれ

当てはめ方は、会社の状況によって少し変わります。個人事業主で取引件数が少ないなら、汎用AIへの相談だけでも十分に回ります。従業員がいて取引量が多い会社は、経理ソフトのAI機能を入れたほうが手間が減ります。すでに顧問税理士がいる会社は、勘定科目の判断を相談するタイミングを月次に決めてしまうと、双方の負担が減ります。

まだ顧問税理士がいない会社は、無理に今すぐ探す必要はありません。まずはAIで領収書の整理と仕訳の下書きを回せる状態にしておき、申告の時期が近づいてきたら、下ごしらえした帳簿を持って相談に行く、という順番でも十分間に合います。

マル

結局、うちみたいな小さな会社は、どこまでAIに頼ればいいのかな?

タイガー

目安はこう。領収書の整理と仕訳の下書きは、AIにどんどん任せていい。勘定科目の判断で迷ったら顧問税理士に一声かける。申告書の作成そのものは、最初から税理士に任せる——この3段構えなら、スピードと安全のバランスが取れるよ。顧問税理士がまだいないなら、下ごしらえを整えてから探すほうが、相談もスムーズに進む。

まとめ:AIは「下ごしらえ」まで、最後の判断は人と税理士

記帳をAIに任せるかどうかは、全部か・ゼロかで決める話ではありません。領収書の整理と仕訳の下書きという「入口」の作業はAIにどんどん任せてよく、勘定科目の判断という「中間」では人の確認をはさみ、申告という「出口」は税理士法上も税理士の領域です。工程を分けて考えれば、どこまで自分たちで進めてよいかは迷わず判断できます。

まずは今使っている経理ソフトに、仕訳の自動提案機能がすでに入っていないか確認するところから始めてみてください。汎用AIと経理ソフトのAI機能、両方の役割を知っているだけで、下ごしらえにかかる時間はかなり変わります。

AIの機能は日進月歩で進化していきます。今日は「候補を出すだけ」の工程が、数年後には人の確認なしでほぼ完結できるようになるかもしれません。それでも、税理士法が定める独占業務の線引きは法律が変わらない限り動きません。技術の進化を追いかけながら、最後の一線がどこにあるかは定期的に確認しておくと安心です。

AIに入力してよい情報の線引きはAIに入れていい情報はどこまで?、AIの答えをそのまま出す前に確認すべき点はChatGPTの答えをそのまま出すとどんなリスクがあるか、社内での利用記録の残し方はAIを使った記録、どこまで残せばいい?、経理ソフトのAI機能を契約する前の規約確認は生成AIの利用規約、契約前にどこを見れば安全か判断できるかにまとめています。

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参考(一次情報):国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」/国税庁「税理士制度のQ&A 6 税理士法違反行為」/マネーフォワード クラウド会計「AI-OCRから入力」機能の使い方/freee「スモールビジネスAIラボ」創設のお知らせ

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言・税務助言ではありません。勘定科目の判断や申告に関する具体的な内容は、必ず税理士にご確認ください。制度・法令は改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。