こんにちは、コマルです。「取引先の情報をChatGPTに相談したいんだけど、うちはNDA(秘密保持契約)を結んでいて……」という相談を受けると、いつも同じことを聞き返します。「その契約書、何と書いてありますか」。NDAとAI入力の可否は、法律の一般論だけでは決まりません。契約書に実際に書かれている条項次第で答えが変わる、数少ないテーマの一つです。まず、判断の流れを見てください。
Q1 契約書に「外部ツール・AIサービスへの入力を禁じる」一文があるか
秘密情報の複製・加工・保存を制限する条項も同じ扱いで確認する
はい
入力しない
明示の禁止がある以上、他の条件を満たしても覆らない
いいえ
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Q2 第三者への開示を認める条項があり、AI提供者がその条件を満たせるか
例:相手方と同等の秘密保持義務を負わせること、目的外に使わないこと
はい
条件を満たす根拠を残して入力
学習に使わない設定・利用規約の該当箇所を記録しておく
いいえ/分からない
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Q3 相手方に書面で事前承諾を得られるか
メール1本でもよい。口頭だけの了承は残らない
はい
承諾を得てから入力する
承諾の記録(メール等)を保存しておく
いいえ
入力しない
書面が残らないなら、安全側に倒すのが実務的な判断
NDAとは「Non-Disclosure Agreement」の略で、取引の相手から受け取った情報を、無断で外部に漏らさないと約束する契約書です。多くのNDAは10年前後前に作られたひな形をそのまま使い回しており、「生成AI」という言葉自体が出てこないものがほとんどです。だからこそ、チャートの3つの問いを順番にたどる必要があります。
Q1:契約書に「外部ツールへの入力」を名指しで禁じる一文があるか
最初に確認するのは一番シンプルな分岐です。近年作られたNDAには、「外部ツール・クラウドサービス・生成AIサービスへの入力を禁じる」という一文が最初から入っていることがあります。この一文がある場合、他の条件がどうであれ、入力してはいけません。

マル

タイガー
Q1で確認すること
- 「外部ツール」「生成AIサービス」「クラウドサービス」への入力・保存を禁じる条項がないか
- 秘密情報の複製・加工を制限する条項も同じ扱いで確認する
- 該当する条項があれば、ここで終了。他の条件を満たしても覆らない
Q2:多くのNDAが本当に聞いているのは「第三者への開示」条項
Q1の禁止条項が無い場合、次に見るべきは「第三者への開示」を扱った条項です。実はこちらのほうが、ほとんどのNDAに元から入っています。経済産業省が公開している秘密保持契約書のひな形には、こういう条文が置かれています。
甲又は乙は、(中略)秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。
つまり、①相手方から書面で事前承諾を得ること、②開示先(=AIサービスの提供者)に契約書と同等の秘密保持義務を負わせること、この2つが揃わないと、第三者への開示はできない書きぶりです。

マル

タイガー

マル

タイガー
第三者開示条項が求めていること(経済産業省ひな形の例)
- 「書面による事前承諾」を得ること
- 開示先(=AI提供者)に「本契約と同等の秘密保持義務」を負わせること
- 学習に使わない設定・利用規約の該当箇所を、承諾の判断材料として残しておく
Q3:相手方に書面で事前承諾を得られるか
Q2の条件を満たせそうなら、最後は実際に承諾を取れるかどうかです。「口頭でOKをもらった」は、契約書が「書面」を要求している以上、記録として弱いままです。

マル

タイガー
Q3で残すべき記録
- 相手方への確認メールとその返信
- 承諾を得た日付・入力する情報の範囲
- 記録が残せないなら、安全側に倒して「入力しない」を選ぶ
契約書の書きぶり別に見る、3つのパターン
ここまでの3つの問いを、実際のNDAでよく見る書きぶりに当てはめると、次の表のようになります。
「外部ツール・生成AIへの入力を禁じる」と明記
近年の契約書に増えている書きぶり
→ 入力しない
「第三者への開示は書面による事前承諾が必要」とだけ書いてある
多くのNDAがこの書きぶり。AIは想定されていないことが多い
→ 個別に確認・承諾を得る
「業務遂行に必要なツールの利用は妨げない」等、包括的に許容
ツール利用を前提にした比較的新しい契約書に見られる
→ 入力してよい可能性が高い
契約書の文言はケースごとに異なるため、実際の判定は契約書の実物を確認したうえで行ってください。

マル

タイガー
なぜAIサービスの運営元が「第三者」にあたりうるのか
NDAには通常、「秘密情報は契約で定めた目的の範囲内でのみ使う」という条項(目的外使用の禁止)も置かれています。AIサービスへの入力そのものは、業務のための手段にすぎないので、目的の範囲内であれば直ちに違反にはなりません。問題になりやすいのは、入力した情報がAI提供者側の学習・研究開発に使われる場合です。この場合、目的外使用にあたる可能性に加えて、前段の「第三者への開示」にもあたりうる、という整理になります。

マル

タイガー
特許庁が公開している「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」に基づくモデル契約書「秘密保持契約書(AI)」でも、秘密情報を第三者に開示する場合は書面による事前承諾と「本契約書と同等の義務」を負わせることを求める条文が置かれています。AIに関わる契約であっても、第三者開示の考え方そのものは、経済産業省の一般的なNDAひな形と変わりません。
Comaruの実務ではこう判断している
Comaruでも、NDAを結んでいるお客様の情報を相談やドラフト作成でAIに使う場面があります。実際にやっているのは、案件ごとに契約書の「第三者への開示」条項を読み直し、①禁止の一文が無いか、②承諾を得る条件は何か、を確認してから使う範囲を決める、という順番です。

マル

タイガー
迷ったときの優先順位
- まず契約書の「第三者への開示」条項を確認する(見当たらなければ担当者に確認する)
- 該当しそうなら書面で事前承諾を取ってから使う
- 承諾が取れない・分からないなら、固有名詞を記号に置き換えるか、入力しない
まとめ:契約書を読まずに「NDAだから全部NG」と決めない
NDAを結んでいるからといって、相手の情報をAIに入れることが自動的に禁止されるわけではありません。読むべきは、契約書の中の「外部ツールへの入力を禁じる条項」と「第三者への開示条項」の2つです。前者があれば入力しない、後者だけなら書面での事前承諾を条件に入力できる可能性がある、という整理になります。
多くの契約書は、AIを想定していない書きぶりのまま残っています。そこに当てはまったときこそ、「たぶん大丈夫」で進めず、相手方に一言確認するか、専門家に相談してから判断してください。判断の記録(日付・入力しようとした内容・確認結果)を残しておけば、あとから説明が要るときにも困りません。
固有名詞を記号に置き換える工夫や、入れていい情報とダメな情報の線引きは、AIに入れていい情報はどこまで?にまとめています。パート・派遣・業務委託の相手にAIを使わせるときの線引きはパート・派遣・業務委託の人にAIを使わせていい?、社内ルールとして1枚にまとめる手順は小さな会社の生成AIルール、個人データが絡む場合の考え方は個人情報保護法とAIの入力を参考にしてください。
30分無料相談では、「うちのNDA、この条項だとAIに入れていいのか」を、実際の契約書の文言に合わせて一緒に確認できます。契約書を読んでも判断に迷う方は、お気軽にどうぞ。
参考(一次情報):経済産業省 秘密情報の保護ハンドブック(参考資料2 各種契約書等の参考例)/特許庁 モデル契約書 秘密保持契約書(AI)ver1.0(AI・データの利用に関する契約ガイドラインに基づく)
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。契約書の文言はケースごとに異なるため、個別の判断が必要な場合は、契約書の実物を確認したうえで専門家にご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
