こんにちは、コマルです。「ChatGPTに会社の情報を入れていいの?」という相談を掘り下げていくと、最後に必ずぶつかる一段深い質問があります。「これって、個人情報保護法でいう第三者提供にあたるんですか?」というものです。結論から先に見せます。次のチャートで、あなたが今入れようとしている内容が、どの段階で法律上の線を越えるかをたどれます。
Q1 誰か個人を特定できる情報が含まれるか
氏名・連絡先・顧客名簿の一行・写真など
いいえ
「第三者提供」の論点ではない
機密情報としての注意点は別途残る
はい
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Q2 そのAIサービスの設定は、入力内容を学習に使う設定か
無料版・個人向けは初期設定で学習に使われうる
いいえ
「提供」にはあたりにくい
学習に使わない設定・法人プランの初期設定など
はい
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Q3 その利用について、本人の同意を得ているか
個別に、その目的での同意を取っているか
はい
同意済みなら提供してよい
実務上、個別に同意を取れているケースは少ない
いいえ
第三者提供にあたりうる→入力しない
本人の同意なしに個人データを渡すことになる(個人情報保護法27条・28条)
ちなみに、「うちは小さな会社だから対象外では」と思っていませんか。2017年5月30日に全面施行された改正個人情報保護法で、かつてあった「取り扱う個人情報が5,000件以下の事業者は適用除外」という規定は撤廃されました。今は、個人情報をデータベース化して事業に使っている事業者であれば、規模を問わずすべて「個人情報取扱事業者」として法の対象になります。
まずは3つの問いを、順番に見ていきます。
Q1:そもそも「個人データ」って何を指すか

マル

タイガー

マル

タイガー

マル

タイガー
「個人データ」に当たるかの目安
- 氏名・連絡先・取引先の担当者名・顧客名簿の一行など、誰かを特定できる情報全般
- 量の多さは関係ない。1人分・1件だけでも対象になりうる
- 迷ったら「これで本人が特定できるか」で判断する
Q2:AIの設定が「学習に使う」側になっていないか
無料版と法人向けプランでは、入力内容の扱いが初期設定から違います。漏洩の仕組みと対策で詳しく整理した内容の要点だけ振り返ると、ChatGPTの無料版・Plus(個人向け)は初期設定で入力内容が学習に使われうる一方、Business・Enterprise・API(法人向け)は初期設定で学習に使いません。GeminiやClaudeも、個人向けと法人向けで初期設定が分かれています。

マル

タイガー
学習設定の見分け方
- ChatGPT無料版・Plus:初期設定は学習に使われうる(設定でオフに変更できる)
- Business(旧Team)・Enterprise・API:初期設定で学習に使わない
- 「うちは大丈夫」と思い込まず、実際の設定画面で確認する
Q3:ここが本題——なぜ「第三者提供」にあたるのか
先に言葉の意味をそろえておきます。「第三者提供」とは、契約や委託でつながっていない外部の相手に、個人データを渡すことです。自社の社員に見せるのは提供ではありません。契約を結んで作業を任せている外注先に渡すのも、原則として提供ではなく「委託」として扱われます。問題になるのは、その輪の外にいる相手に渡したときです。AIに文章を入力する行為が、なぜその「渡す」に当たりうるのか——ここがこの記事の核心です。
個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました。その中核はこの一文です。
生成AIサービスの利用者が入力した情報について、生成AIサービスの提供者が自らのAIの精度向上等のために学習データとして利用することとしている場合に、利用者が個人データもしくは保有個人情報を入力すると、利用者から提供者に対し、個人データもしくは保有個人情報を提供したことになります。
つまり、入力した個人データが「AI提供者自身の学習」に使われる設定になっている場合、入力する行為そのものが提供者への「提供」にあたる、という整理です。多くの中小企業が該当する「個人情報取扱事業者」には、個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得る義務があります(個人情報保護法第27条・第28条)。行政機関等が保有個人情報を扱う場合も、特定された利用目的の範囲内での利用・提供が原則です(同法第69条)。
第三者提供にあたる理由(一次情報)
- 個人情報保護委員会(2023年6月):入力情報が提供者側の学習に使われる設定の場合、個人データの入力は提供者への「提供」にあたりうる
- 個人情報取扱事業者は、個人データを第三者に提供する際、原則あらかじめ本人の同意が必要(個人情報保護法27条・28条)
- 行政機関等が保有個人情報を扱う場合も、目的の範囲内の利用・提供が原則(同法69条)
例外——あたらない、と言えそうなケース
3つの問いすべてに違う答えが返ってくる組み合わせを、表にしておきます。
(無料版の初期設定など)学習に使わない設定
(法人プラン・オフ設定など)
(氏名・連絡先・顧客情報など)
(固有名詞を伏せた相談など)
個人情報保護委員会の注意喚起(2023年)をもとにComaruが整理。実際の判定は個別事情によるため、迷ったら入力しないのが安全側の判断です。

マル

タイガー

マル

タイガー
Comaruの実務ではこう判断している
一次情報がここまではっきりしている論点でも、実際の線引きは会社ごとの運用に落ちます。Comaruでは、相談やドラフト作成でAIを使うとき、お客様の氏名・連絡先・契約条件をそのまま入力する前提を持たず、「A社」「担当者Xさん」のように固有名詞を記号に置き換えてから相談するようにしています。どうしても固有名詞が必要な作業(契約書の下書きなど)は、学習に使わない設定にした法人向けプランを使い、出力された文面は必ず自分の目で確認してから使う、という順番を守っています。判断に迷う個別のケースは、専門家に確認する前提で「まず入力しない」を先に選びます。

マル

タイガー
迷ったときは「なぜ入力しないと判断したか」を一言メモしておくと、あとで社内に説明が要るときにも役立ちます。難しい仕組みは要りません。日付・入力しようとした内容・判断の3行で十分です。
迷ったときの優先順位
- 固有名詞は記号に置き換えられないか、先に考える
- 置き換えられないなら、学習に使わない設定・法人プランかを確認する
- それでも迷うなら、入力しない。あとから同意を取り直すより簡単
まとめ:線引きは「個人データ」「設定」「同意」の3点で決まる
生成AIへの入力が個人情報保護法の「第三者提供」にあたるかどうかは、印象や思い込みで決まる話ではありません。①誰かを特定できる個人データが含まれるか、②入力先のAIサービスが学習に使う設定になっているか、③本人の同意があるか——この3つの組み合わせで、機械的に判断できます。
多くの中小企業が実際に直面するのは、①はい・②はい・③いいえ、という組み合わせです。ここに当たったら、個人情報保護委員会の注意喚起どおり、原則として本人の同意なしに入力すべきではありません。逆に、設定を学習オフ・法人プランに変えるだけで、②の分岐が変わり、リスクの位置づけも変わります。まず自分たちの設定がどちらなのかを確認するところから始めてください。
固有名詞を記号に置き換える工夫や、社内で「入れない情報」を先に決めておく考え方は、AIに入れていい情報はどこまで?にまとめています。ルールとして1枚にまとめる手順は小さな会社の生成AI利用ルール、無料版のまま使うなら最初にやるべき設定変更は「学習させない」設定の手順を参考にしてください。全体像を先に押さえたい方はChatGPTに会社の情報を入れて大丈夫?からどうぞ。
30分無料相談では、「うちが今使っている設定でこの情報を入れて大丈夫か」「個人データを扱う業務でAIをどこまで使ってよいか」を、実際の入力内容に合わせて一緒に整理できます。判断に迷ったまま使い続けるのが不安な方は、お気軽にどうぞ。
参考(一次情報):個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について/同・生成AIサービスの利用に関する注意喚起(リーフレットPDF)
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・ガイドラインは改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
