こんにちは、コマルです。先月、こんな相談がありました。「AIを使い始めたのに、数か月で誰も触らなくなった」というものです。業種や規模が分かる書き方は避けてほしいとのことなので、詳しい会社の情報には触れず、実際にあったやり取りの流れだけをお伝えします。
その工務店の社長は、日報や見積書の下書きにChatGPTを使えないかと考えていました。書類仕事に追われる社員の負担を減らしたかったからです。まず研修の日を設け、事務所の会議室にスタッフを集めて、パソコンでの使い方をひととおり教えました。当日は誰もが興味深そうに画面をのぞき込み、質問も飛び交いました。

マル

タイガー
何が起きたか——現場からログインが消えた
研修から1か月後、社長がふと気づいたのは、パソコンでのAI利用のログが、事務所からのアクセスに偏っていることでした。現場に出ている職人や現場監督は、日中ほとんど作業着姿で建物や資材と向き合っていて、パソコンを開く時間そのものがありません。
休憩中に少し触ってみた社員もいたようですが、電波の悪い現場でノートパソコンを開くのは荷物になり、手が汚れたままキーボードを打つ気にもなれなかった、と後から聞いたそうです。研修そのものは丁寧で、覚えたことも間違っていませんでした。ただ、覚えた場所と、使う場所が最初から違っていたのです。

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変えたこと——事務所に戻った10分だけを使う
社長が次にやったのは、パソコン研修をやり直すことではなく、AIを使う場面そのものを見直すことでした。まず対象を日報の下書きだけに絞り、パソコンではなくスマホの音声入力を使うことにしました。作業着のままでも、スマホに向かって「今日やった作業」「使った資材」を話すだけで下書きができる形です。
使うタイミングも変えました。現場作業中ではなく、「一日の終わりに事務所へ戻った、片付けの前の10分」と決めたのです。道具を触れる場所と時間を、社員のスケジュールに合わせて後から探すのではなく、先に固定してしまう考え方でした。

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タイガー
最初にやったこと
- 事務所の会議室でパソコン研修
- 「使いたいときに使ってOK」
- 対象は日報も見積りも一括で
結果:現場からのログインが1か月でほぼ消えた
変えたあと
- スマホの音声入力で下書き
- 事務所に戻った片付け前の10分
- 対象は日報の下書きだけに絞る
結果:半分ほどの現場で使う人が出てきた
ただし「変えたあと」も全員が使うようになったわけではない。手で書くほうが早い職人も残っている。
巻き込み方も変えた——まず1人の現場監督から
道具と時間を変えると決めた社長は、案内の仕方も変えました。全員に一斉に配るのをやめ、日ごろから新しいやり方に前向きな現場監督ひとりに絞って、まず試してもらったのです。うまくいけば、その現場だけでも日報が楽になる。うまくいかなくても、その場で直せる小さな失敗で済みます。

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その後——全員が使うようにはならなかった
数か月後、日報の下書きは半分ほどの現場が音声入力で作るようになったそうです。ただし全員が使うようになったわけではなく、ベテランの職人の中には「話しかけるより手で書いたほうが早い」と、今もノートに手書きを続けている人がいます。社長は無理に揃えようとはせず、使いたい人から広がればいい、という考えに落ち着いたと話していました。

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日報が落ち着いてきたころ、社長は見積書の下書きにも同じやり方を広げようとしているそうです。ただしそちらは今のところ事務所での作業が中心のままで、日報のときのように「現場の動線に合わせる」工夫がどこまで要るのかは、まだ見極めている最中だと話していました。
Comaruの実務ではこう考えている
工務店の現場でのAI活用の定着について、公的な統計や指針は、調べた範囲では見当たりませんでした。ここから先は一般論としてではなく、Comaruが案件でくり返し見てきた実務の感覚として書きます。
介護施設のシフト管理のように、パソコンの前に座って仕事をしない相手を扱う案件が多いのですが、共通しているのは「使い方を教える」より先に「いつ・どこで触るか」を決めたほうが定着するということです。研修室で覚えたやり方は、覚えた場所でしか思い出せません。現場に机がないなら、机がなくても触れる道具と、現場の人がすでに持っている数分を借りるほうが、確実に一歩進みます。

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タイガー
現場仕事にAI活用を定着させるなら
- パソコン前提の研修を、そのまま現場作業員に当てはめない
- 使う道具と場面を、現場の人がもともと持っている動線に合わせる(スマホ・音声入力・戻ってきた数分)
- 全員が同じやり方で使うことをゴールにしない。使いたい人から広がればよいと割り切る
まとめ:教え方ではなく、使う場面を現場に合わせる
パソコンの前に座って学ぶ研修は、事務所仕事には合っても、現場を動き回る仕事には最初から合わないことがあります。今回のケースで動き出したきっかけは、研修をやり直したことではなく、使う道具をスマホに、使う場面を「事務所に戻った10分」に変えたことでした。
全員が同じように使うようになったわけではありません。それでも、使う人がゼロだった状態からは動き出しています。無理にそろえようとせず、現場の動線に合わせて小さく始める——工務店に限らず、机に向かう時間が少ない仕事ほど、この順番が効くように思います。
研修の中身そのものを見直すならAI研修、何を教えれば現場は動くか、最初の30日で何を測るかは社内にAIを入れる最初の30日、使う人が1人だけで止まっているならAIが使えるのは1人だけ、導入がうまくいかない理由から見直すなら中小企業のAI導入が失敗する5つの理由もあわせてご覧ください。
30分無料相談では、現場作業が多く定着しづらいと感じている状況をお伺いしたうえで、どの業務からどの道具で始めればよいかを一緒に整理します。研修をやったのに使われていない、という方もお気軽にどうぞ。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
