こんにちは、コマルです。先月、複数の介護施設から寄せられた相談に、共通する形がありました。「ケアプランの下書きをChatGPTに手伝わせたら、あとから怖くなった」というものです。介護記録には、利用者の氏名だけでなく病歴や心身の状態も含まれます。この「病歴」という言葉、実は個人情報保護法の条文にそのまま出てくる重い言葉です。今回は、その相談をもとにした合成例(特定の施設・利用者が分かる情報は含みません)で、何が起きたのか、どこで止めるべきだったのかを追っていきます。
残業続きの夜、記録をそのまま貼り付けた
その施設の相談員は、月末が近づくたびにケアプランの下書きに追われていました。利用者ごとの状況をまとめ、次回の見直しに向けた文章を作る作業です。ある夜、「これ、AIに要約させたら早いのでは」と思いつき、手元の記録をそのままChatGPTに貼り付けました。「田中花子さん、85歳、要介護3、〇〇号室、認知症の既往あり、長男家族と同居」——実際の記録は、こういう書き方でした。

マル

タイガー
翌朝、出来上がった文章を読み返して違和感
翌朝、相談員はAIが作った要約文を読み返しました。文章自体はよくできていました。ただ、読み返すうちに「これ、こんなに詳しく書いて大丈夫だったのか」という違和感が残りました。誰かに聞かれたわけでも、事故が起きたわけでもありません。ただの違和感です。

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なぜ「病歴」を入れたことが特に重かったのか

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この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。(個人情報保護法第2条第3項)

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要配慮個人情報になると、通常の個人情報より扱いが厳しくなります。同法第20条第2項は、要配慮個人情報を取得する際には、限られた例外を除きあらかじめ本人の同意が必要だと定めています。さらに第27条第2項は、本人の求めに応じて提供を止める「オプトアウト」という簡易な方法での第三者提供を認めていますが、そのただし書きで要配慮個人情報はこの簡易な方法の対象から除外されています。つまり、要配慮個人情報を渡すときは、常に本人の同意が必要という、より重い扱いになります。普通の名前や連絡先とは、ここで扱いが変わります。
この施設も、悪気があって同意を取らなかったわけではありません。ケアプランの下書きを社内でメモ代わりに使う延長のつもりで、AIへの入力を「社外に渡す」行為だとは考えていなかったのです。この感覚のずれこそが、この記事で埋めておきたいところです。
どうすべきだったか——記号化という一手間

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相談員は、この一手間を実際にやってみました。氏名は「利用者A」、生年月日は「80代」という年代に、部屋番号は削除。AIに渡すのは、下書きに必要な範囲の状況説明だけに絞りました。
氏名を消しても、部屋番号や家族構成など複数の情報を組み合わせると特定できることがある。必要な範囲まで絞るのが目的。

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Comaruの実務でも、近い判断を重ねている
Comaruは、介護施設の勤務表(シフト)を自動で組む仕組みを実際に開発・運用しています。記録業務そのものではなく、隣り合う領域です。それでも、扱う情報の性質は似ています。

マル

タイガー

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ケアプランや記録の作成そのものはComaruの守備範囲ではなく、勤務表という近い領域にいるだけです。今回のケースも、記録業務の専門家としてではなく、個人情報の扱い方という切り口で一緒に整理した、という立場でした。専門知識が要る部分は、必要に応じて弁護士や社会保険労務士など、その領域の専門家につなぐようにしています。
介護記録にAIを使うときに外さない3点
- 病歴・心身の状態は「要配慮個人情報」。取得にも第三者提供にも、原則あらかじめ本人の同意が必要
- 氏名を記号にしても、部屋番号や家族構成など複数の情報の組み合わせで特定できることがある
- 迷ったら「その作業に本当に必要な情報か」で判断し、要らないものは削る側に寄せる
まとめ:病歴を含む記録は「常に同意が要る」前提で扱う
介護記録には、利用者の氏名や部屋番号だけでなく、病歴や心身の状態といった要配慮個人情報が含まれがちです。この区分は、通常の個人情報より重く扱われ、取得にも第三者への提供にも、原則あらかじめ本人の同意が必要になります。ChatGPTなどの生成AIに入力する行為も、入力先の設定次第で「提供」にあたりうることは、個人情報保護法とAIの入力で整理したとおりです。
だからといって、AIを使わない選択だけが正解ではありません。氏名を記号に、年代や状態を大づかみな表現に置き換え、その作業に本当に必要な情報だけを渡す——この一手間で、多くの場面は安全に使える形に変わります。ただし、氏名を消しても、部屋番号や家族構成の組み合わせで特定できてしまうことがある点は、見落とさないようにしてください。
この判断は、施設の規模に関係なく必要です。小さな施設だから対象外、ということはありません。「この作業に、この情報は本当に要るか」を、入力する前に一呼吸置いて確認する——それだけで、今回のような違和感を事故に育てずに済みます。
記号化の考え方は、クレーム対応の下書きでも同じです。クレームメールの下書きをAIに頼む前に、名前を消す理由、AIに入れてしまった後の初動はAIに情報を入れてしまった、と気づいたら最初にやること、そもそも何を入れていいかの一覧はAIに入れていい情報はどこまで?にまとめています。
30分無料相談では、「うちの記録業務でAIをどこまで使ってよいか」を、実際に扱っている情報の種類に合わせて一緒に整理できます。使うのを諦める前に、まずご相談ください。
参考(一次情報):e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律(第2条3項・第20条2項・第27条2項)/個人情報保護委員会・厚生労働省 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の記録業務での判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・ガイドラインは改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
