こんにちは、コマルです。以前のChatGPTに会社の情報を入れて大丈夫?では、「入力した内容が学習に使われることがある」という仕組みの話をしました。今回はその続きで、もっと実務寄りの疑問に答えます。「で、結局これは入れていいの?」——目の前の一件一件を、迷わず判断できるようにする回です。物知り猫のタイガーと、心配性なマルが、具体例で一緒に線を引いていきます。
「なんとなく不安」を判断できる形に変える

マル
タイガー、前に「危ない情報は入れない」って教わったけど、実際に仕事してるとさ、「これって入れていいのかな……」って毎回迷うんだよね。いちいち考えるのも疲れるし。

タイガー
それ、すごく分かる悩みだよ。多くの人は「なんとなく怖いから、とりあえず全部やめとく」か「便利だから、なんとなく全部入れちゃう」の二択になりがちなんだ。でも本当は、その間に**「見分け方」**があるんだよ。

マル
見分け方? 感覚じゃなくて、ちゃんと基準があるってこと?

タイガー
そう。今日は「なんとなく不安」を、3つの問いに答えるだけで判断できる形に変えていく。そのあとで、実際によくある14個の例を一覧表にして、パッと確認できるようにするよ。
ここまでのまとめ
- 「怖いから全部やめる」「便利だから全部入れる」の二択にしない
- 3つの問いに答えれば、目の前の一件を判断できるようになる
- 具体例の一覧表で、迷ったときにすぐ確認できるようにする
判断の3つの問い

マル
その3つの問いって、何?

タイガー
①本人だと特定できるか、②守秘義務があるか、③出たら取り返しがつかないか。この3つだよ。ひとつでも「はい」があれば、その情報はそのままでは入れない。全部「いいえ」なら、基本的には入れて大丈夫。
1本人だと特定できるか氏名・連絡先・組み合わせで分かる情報
2守秘義務があるか契約・就業規則・業界のルールで縛られている情報
3出たら取り返しがつかないか訂正・回収ができない・信用を失う情報
ひとつでも「はい」があれば、その情報はそのままでは入れない。
図1判断の3つの問い。ひとつでも「はい」があれば、その情報はそのままでは入れない。

マル
①の「本人だと特定できるか」って、具体的にはどういうこと?

タイガー
氏名や連絡先みたいに、それだけで、あるいは他の情報と組み合わせて「あ、この人のことだ」と分かってしまう情報のこと。個人情報保護法も、氏名・生年月日その他の記述によって「特定の個人を識別できる」かどうかを、個人情報かどうかの分かれ目に置いている(第2条第1項第1号)。「識別できる」の意味は、個人情報保護委員会が「一般の人の判断力・理解力で、その人だと分かるか」と説明しているよ。ここが一番、機械的に判断しやすいポイントだよ。

マル
②の「守秘義務」は?

タイガー
契約書に「秘密保持」って書いてあるもの、就業規則で口外禁止になっているもの、業界のルールで縛られているもの。お客さんとの契約書や、他社から預かった見積り条件なんかが典型だね。約束で縛られている情報、と考えるといい。

マル
③の「取り返しがつかない」は、なんとなく分かる気がする……。

タイガー
そう、直感でいいんだ。「これが外に出たら、謝って済む話じゃないな」と思うもの。人事の話、未公開の経営方針、まだ発表前の商品情報。訂正も回収もできない性質のものだよ。
ここまでのまとめ
- ①本人だと特定できるか(氏名・連絡先など、個人情報保護委員会も判断の軸にしている観点)
- ②守秘義務があるか(契約・就業規則・業界ルールで縛られているか)
- ③出たら取り返しがつかないか(訂正・回収ができないか)
- ひとつでも「はい」なら、そのままでは入れない
一覧表:入れてよい/加工すれば可/入れない

マル
3つの問いは分かったけど、毎回考えるの、やっぱりちょっと面倒かも……。

タイガー
だと思った。だから、よくある14個のケースを先に判断しておいたよ。まずは全体像から。
○ 入れてよい公開情報・固有名詞のない一般的な相談
△ 加工すれば可固有名詞を記号に置き換えるなど
× 入れない本人特定・守秘義務・取り返しがつかない
図23つの区分のイメージ。「入れない」と「入れてよい」の間に、「加工すれば可」という中間の道がある。

タイガー
実務でよく出てくる例を、この3区分に振り分けたのが下の表。迷ったら、まずここを探してみて。なければ、さっきの3つの問いに戻ればいい。
| 情報 | 区分 | ひとこと |
|---|
| 一般的な業界動向についての質問 | 入れてよい | すでに世の中にある公開情報の範囲 |
| 公開済みのプレスリリース・自社サイトの文章の要約 | 入れてよい | 公開情報なので問題なし |
| 自分で書いた文章・企画のたたき台の推敲依頼 | 入れてよい | 自分の言葉・自分の裁量の範囲 |
| 固有名詞を含まない、一般的な業務の進め方の相談 | 入れてよい | 誰か・どこかが特定されない相談 |
| 見積書の金額感(取引先名つき) | 加工すれば可 | 「A社」「◯万円台」に置き換えれば相談できる |
| 自社のソースコード(未公開の主要ロジック) | 加工すれば可 | 核心部分を伏せ、構造や考え方だけ相談する |
| 取引先とのメールのやり取り | 加工すれば可 | 社名・個人名を記号に置き換えれば下書き相談できる |
| アンケートの自由記述(個人名なし・集計済み) | 加工すれば可 | 匿名化されていれば傾向の相談はしやすい |
| 顧客の氏名・連絡先 | 入れない | 本人が特定できる個人情報そのもの |
| 顧客の取引内容・購入履歴 | 入れない | 個人情報かつ、守秘義務の対象になりうる |
| 社内議事録(経営方針・人事の話を含む) | 入れない | 出たら取り返しがつかない機密 |
| 他社との契約書の条文 | 入れない | 守秘義務契約で縛られている情報 |
| 応募者の履歴書・職務経歴書 | 入れない | 本人が特定できる個人情報そのもの |
| 社員の給与・人事評価のデータ | 入れない | 機微性が高く、取り返しがつかない |

マル
「加工すれば可」が思ったより多いんだね。全部ダメか全部OKかだと思ってた。

タイガー
そこがポイント。「入れない」に分類されるものが少なくて済むように、加工という逃げ道を持っておくんだ。次はその加工のやり方を、具体的に見ていこう。
「加工して使う」の具体

タイガー
加工のやり方は、難しくない。よく使う4つの型を紹介するよ。
伏せ字固有名詞を「A社」「担当者X」に置き換える
仮名化実名の代わりに架空の名前・番号を一貫して使う
数値のぼかし正確な金額・件数を「概算」「大まかな幅」にする
サンプル化実データの代わりに似た性質のダミーデータを作って渡す
図3「加工すれば可」を実行するための4つの型。中身の相談はできて、本物の情報は渡さない。

マル
「伏せ字」と「仮名化」って、何が違うの?

タイガー
伏せ字は「A社」「担当者Xさん」みたいに、その場しのぎで置き換えること。仮名化は、もう少し丁寧にやる方法で、架空の名前や番号を一貫して使う。長い相談を何度もするなら、仮名化のほうがやりとりがブレなくていいよ。

マル
「数値のぼかし」は?

タイガー
正確な金額や件数をそのまま出さずに、「だいたい◯万円台」「数十件くらい」みたいに幅で伝えること。相談の中身(進め方・書き方)には、たいてい正確な数字までは要らないんだ。

マル
「サンプル化」は最後の手段って感じ?

タイガー
むしろ一番使い勝手がいいかも。実データの代わりに、似た性質のダミーデータを自分で作って渡す。「こんな感じの表があります」で、形式やロジックの相談は十分できる。中身は空っぽでも、相談は成立するんだ。
ここまでのまとめ
- 伏せ字:固有名詞をその場で「A社」「担当者X」に置き換える
- 仮名化:架空の名前・番号を一貫して使う(長い相談向き)
- 数値のぼかし:正確な金額・件数を「概算」「幅」にする
- サンプル化:似た性質のダミーデータを作って渡す(形式・ロジックの相談に強い)
迷ったときの逃げ道

マル
それでも、表にない情報で「これどっちだろう」って迷うときは、どうすればいいの?

タイガー
そのときのための、最後の逃げ道がある。**「入れずに聞く」**んだよ。

マル
入れずに聞くって、どうやるの?

タイガー
情報そのものを渡すんじゃなくて、「こういう性質の情報を扱うとき、一般的にはどう進めるべき?」って、状況だけを説明して聞くんだ。「顧客の解約理由のデータをどう分析すればいいか」じゃなくて、「顧客の行動データを分析するときの、一般的な手順を教えて」みたいにね。

マル
具体的な中身が要らない相談なら、それで十分ってこと?

タイガー
その通り。判断に迷うこと自体が、「これは守秘義務か個人情報に近いかもしれない」というサイン。判断できないときは、判断できる形まで情報を削ってから聞く。これが一番安全な逃げ道だよ。
ここまでのまとめ
- 迷ったら、情報そのものではなく「状況」だけを説明して聞く
- 「〇〇会社の△△データ」ではなく「一般的にこういう性質のデータを扱うときの手順」と聞き方を変える
- 判断に迷うこと自体が、注意が必要なサイン
まとめ:一件ずつ、迷わず決められるように
「なんとなく不安」は、判断できないから不安なんです。①本人だと特定できるか、②守秘義務があるか、③出たら取り返しがつかないか——この3つの問いに答えれば、目の前の一件は判断できます。迷ったら一覧表を確認し、境界線上のものは伏せ字・仮名化・数値のぼかし・サンプル化で加工する。それでも迷うなら、情報を渡さずに状況だけを聞けばいい。
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参考(一次情報):個人情報保護委員会「特定の個人を識別することができる」とは、どのような意味ですか/個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個人情報や機密情報にあたるかどうかの個別の判断は、必要に応じて専門家にご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。