こんにちは、コマルです。「応募者の履歴書、ChatGPTに読み込ませて要約させたら早いんじゃないか」——採用担当の方から、この相談をよく聞きます。結論から、チャートで見せます。次の3つの問いをたどれば、今やろうとしている使い方が「そのまま進めていい」側か「一度立ち止まるべき」側か、その場で見当がつきます。
Q1 本人の同意・通知なしに、原本のまま入れようとしているか
氏名・住所・生年月日・学歴・職歴など
いいえ
記号化済みなら次の問いへ
「応募者A」「30代・大卒」のように置き換えてある
はい
次の問いへ
Q2の答えが特に重い意味を持つ
Q2 入力先のAIは、学習に使わない設定になっているか
無料版・個人向けは初期設定で学習に使われうる
いいえ
応募者情報がAI提供者側の学習に回りかねない
設定を見直すか、法人向けプランに切り替える
はい
次の問いへ
Q3 合否・通過可否の判断そのものをAIにさせようとしているか
下書き・要約・比較表づくりまでか、決定そのものか
いいえ
下書き・要約の範囲なら使ってよい
最終判断は人が行う前提を保つ
はい
NG。合否は必ず人が決める
判断理由をあとから説明できなくなる
先に前提をそろえておきます。履歴書には氏名・生年月日・住所・学歴・職歴など、本人を特定できる情報がひとまとまりで載っています。量が多いからではなく、これらの情報がそのまま「個人データ」にあたるという点が出発点です。個人データとしての一般的な線引きは個人情報保護法とAIの入力で整理済みなので、ここでは採用業務ならではの2つの上乗せ——職業安定法の守秘義務と、合否判断そのものの扱い——に絞って見ていきます。
Q1:本人の同意・通知なしに、履歴書をそのまま入れようとしていないか

マル

タイガー

マル

タイガー
Q1で確認すること
- 履歴書の氏名・住所・生年月日・学歴・職歴は、量に関係なく「個人データ」にあたる
- 記号化(「応募者A」「30代・大卒」など)すれば、この問いはクリアしやすい
- 記号化していない原本のままなら、次のQ2の答えが特に重い意味を持つ
Q2:入力先のAIは、学習に使わない設定になっているか
無料版・個人向けプランと、法人向けプランでは、入力内容の初期設定が違います。この違いは個人情報保護法とAIの入力のQ2で詳しく整理したとおりで、無料版・Plus(個人向け)は初期設定で入力内容が学習に使われうる一方、Business・Enterprise・API(法人向け)は初期設定で学習に使いません。

マル

タイガー
Q2で確認すること
- 無料版・Plus(個人向け)は初期設定で学習に使われうる
- Business・Enterprise・API(法人向け)は初期設定で学習に使わない
- 個人のスマホやアカウントで、初期設定のまま使っていないか確認する
Q3:ここが本題——合否の判断そのものをAIに委ねていないか
Q1・Q2は、個人情報保護法とも共通する一般的な線引きです。採用業務に特有なのは、ここからです。履歴書の下書き整形や要約はAIに任せてよくても、「この人を通過させるか、不合格にするか」という判断そのものをAIに決めさせることは避けるべきです。
採用選考のように人の機会に大きく影響する判断を、記録もなくAIに丸投げしていいのかという論点は、AIを使った業務の記録をどこまで残すかを整理したAIを使った記録、どこまで残せばいい?でも扱いました。採用は、そこで挙げた「人の権利や安全に大きく影響する判断」の代表例です。

マル

タイガー

マル

タイガー
Q3で確認すること
- 下書き・要約・比較表づくりはAIに任せてよい
- 合否・通過可否の最終判断は、必ず人が行う
- 判断理由を、あとから人に説明できる状態を保つ
職業安定法が定める、求職者情報の扱い方
ここまでの3問の前提になる条文を、原文で確認しておきます。職業安定法第5条の5はこう定めています。
公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、特定募集情報等提供事業者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者……は、それぞれ、その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報……を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。
この条文が対象にしているのは「求人者」——つまり人材紹介会社だけでなく、自社で採用活動を行う一般の会社も含まれます。集めた個人情報を、採用選考という目的の範囲を超えて使ってはいけない、というのが基本の考え方です。AIへの入力そのものを直接禁じた条文ではありませんが、「採用のために集めた情報を、無関係な目的にまで広げない」という原則は、AIに読み込ませる場面にもそのまま当てはまります。
あわせて第51条は、職業紹介事業者や求人者、その従業者に対し、業務上知り得た秘密や個人情報を「正当な理由なく」「みだりに」他人に知らせてはならないと定めています。退職・異動の後もこの義務は続きます。
職業安定法の条文(一次情報)
- 第5条の5:求人者を含む関係者は、目的の範囲内でのみ求職者の個人情報を収集・保管・使用してよい
- 第51条:業務上知り得た秘密・個人情報を、正当な理由なくみだりに知らせてはならない(退職後も継続)
- いずれも対象は人材紹介会社に限らず、自社採用を行う一般の会社の「求人者」も含む
例外——ここまでなら大丈夫、と言えるケース
3つの問いの答え方によって、実際にどう変わるかを表にしておきます。
- ・「応募者A」「30代・大卒」のように記号化した相談
- ・学習に使わない設定(法人向けプラン等)での要約・整形
- ・複数応募者の職歴を比較する表づくり
- ・合否を決める前の、確認したい質問リストの下書き
AIに任せるのは「材料をそろえる」までの作業
- ・履歴書の原本を、無料版の初期設定のまま貼り付ける
- ・応募者名・住所を伏せずにそのまま要約させる
- ・「この人を通過させるべきか」をAIに判定させる
- ・AIの評価結果だけを理由に不合格を決める
個人情報の扱い方、または合否判断そのものの委任

マル

タイガー
Comaruの実務ではこう判断している
Comaruは人材紹介や採用代行そのものは行っていませんが、案件の相談を受ける中で応募者情報に近い個人データを扱う場面があります。そのときは、氏名や連絡先を記号に置き換えてから相談する、学習に使わない設定のプランを使う、という手順をほかの記事と同じく徹底しています。加えて、進めるかどうかの判断そのものをAIに聞くことはしません。AIに求めるのは材料の整理と選択肢の提示までで、決めるのは自分の役目だと決めています。

マル

タイガー
まとめ:材料はAI、決めるのは人
履歴書をChatGPTに読み込ませてよいかは、①同意・通知なしに原本のまま入れていないか、②入力先のAIが学習に使わない設定か、③合否の判断そのものをAIに委ねていないか——この3つで判断できます。多くの会社が見落としがちなのは③です。要約や下書きは便利に使ってよくても、人を選考する最終判断だけは、AIに渡してはいけません。
職業安定法は、求人者を含む関係者に対して、集めた個人情報を目的の範囲内でしか使えないと定めています。この原則に沿って、記号化・設定・最終判断の3点を押さえれば、AIの便利さを失わずに採用業務へ取り入れられます。
AIへの入力が個人情報保護法の「第三者提供」にあたるかの基本は個人情報保護法とAIの入力、AIが書いた文章を社外に出す前の注意点はChatGPTで作った求人票、そのまま出すと法律違反になることも、判断の記録をどこまで残すべきかはAIを使った記録、どこまで残せばいい?にまとめています。
30分無料相談では、実際に使おうとしている履歴書の扱い方を見ながら、どこまでAIに任せて、どこから人が決めるべきかを一緒に整理できます。判断に迷ったまま使い続けるのが不安な方は、お気軽にご相談ください。
参考(一次情報):e-Gov法令検索 職業安定法
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の採用選考における判断は、実際の業務内容や状況によって異なるため、社会保険労務士など専門家にご確認のうえで対応してください。制度・法令は改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
