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保険代理店がAIに顧客の告知情報を入れていいか、募集規制との関係

こんにちは、コマルです。「お客様の告知内容をAIに要約させて、提案書に落とし込めたら早いのに」——保険代理店の方から、この手の相談を受けます。結論を先に、チャートで見せます。次の3つの問いをたどれば、今やろうとしている使い方が「大丈夫」側か「立ち止まる」側か、その場で見当がつきます。

入力・作成しようとしている内容顧客の告知情報や、契約に関する提案文・説明文

Q1 告知情報など要配慮個人情報の中身が入っているか

健康状態・傷病歴・既往症など

いいえ

案内文・一般的な想定問答は相談してよい

ただし文面が募集規制に触れないかは別途確認(下記参照)

はい

次の問いへ

Q2 所属保険会社・代理店のルールで許されている使い方か

社内のAI利用ルール・コンプライアンス指示など

いいえ・確認できない

使わない

ルールが無ければ、まず所属先に確認する

はい

次の問いへ

Q3 入力先のAIが、学習に使わない設定になっているか

法人向けプラン・学習オフの設定など

いいえ

入力を控える

無料版・初期設定のままだと外部の学習に回りうる

はい

記号化した上で、募集規制に触れる文言でないかを確認

入力側が整っても、AIが作った文面側の確認は別枠で要る

図1告知情報をAIに入力してよいかを3つの問いでたどる判断チャート。保険業法300条・294条の3の考え方をもとに整理。

先に言葉をそろえておきます。「告知情報」とは、契約者・被保険者が保険会社に伝える健康状態・傷病歴・職業などの情報で、保険を引き受けるかどうかの判断材料になるものです。個人情報保護法の枠組みでは、病歴などは「要配慮個人情報」にあたりうる重い情報として扱われます(この論点は個人情報保護法とAIの入力で整理済みです)。ただ、保険代理店にはもう一つ別のルールがのしかかります。それが今日の主題、募集規制です。

Q1:告知情報など要配慮個人情報の中身が入っているか

マル

最初の分かれ道だね。「健康状態」ってどこまで含まれるの?既往症だけ?

タイガー

既往症だけじゃないよ。服薬歴・入院歴・職業(危険度に関わる仕事かどうか)なども告知情報に含まれる。数値や固有名詞が無くても、「この人が保険に入れるか」の判断材料になる情報はすべて対象と考えていい。

マル

じゃあ「更新のご案内、そろそろ送りたいんだけど文面どう書こう」みたいな相談は?

タイガー

それは対象外。契約者本人の告知内容に触れない、一般的な案内文・説明文の相談はここで止まる。次の問いに進まなくても、そのまま相談して大丈夫だよ。

「告知情報」にあたるかの目安

  • 健康状態・傷病歴・服薬歴・職業など、保険の引受判断に関わる情報全般
  • 案内文・一般的な保険用語の説明文など、契約者個人の告知内容に触れない相談は対象外
  • 迷ったら「これは契約者の告知内容そのものか」で判断する

Q2:所属保険会社・代理店のルールで許されている使い方か

告知情報が絡まないとしても、AIの使い方そのものが所属先のルールの範囲内かは別に確認が必要です。保険業法第294条の3は、保険募集人(代理店を含みます)に対し、募集業務に関して取得した顧客情報の適正な取扱いなど、健全かつ適切な運営を確保するための措置を義務づけています。実務上この義務は、所属保険会社が代理店向けに定めるコンプライアンスルール・システム利用ルールという形に落とし込まれていることがほとんどです。

マル

うちの代理店、AIについての社内ルールなんて聞いたことない……。

タイガー

ルールが見当たらないなら、「決まっていない=好きに使ってよい」ではなく「まず所属先に確認する」が先。募集人としての体制整備義務は代理店側にもかかっているから、確認した記録を残しておくのも安心材料になるよ。

Q2で確認すること

  • 保険業法294条の3は、募集業務に関する顧客情報の適正な取扱いなどの措置を募集人に義務づけている
  • 実務ではこの義務が、所属保険会社の社内ルールという形で具体化されていることが多い
  • ルールが見当たらないときは「使ってよい」ではなく「先に確認する」が安全

Q3:入力先のAIが、学習に使われない設定になっているか

Q1・Q2をクリアしても、最後にAI側の設定を確認します。無料版・個人向けプランは初期設定のままだと入力内容が学習に使われうる一方、法人向けプラン(Business・Enterprise等)や学習オフの設定にすれば、入力内容が外部のAI提供者側の学習に回ることは避けられます。具体的な操作手順は「学習させない」設定の手順にまとめました。

マル

設定さえ整えれば、告知情報を扱った相談もAIにしていいってこと?

タイガー

そこまでは言い切れないよ。設定を整えるのは「入力側」の対策。ここから先は「AIが作った文面側」の話が別に残る。ここが保険業界特有の、もう一段の注意点なんだ。

本題——募集規制(保険業法300条)との関係

ここからが、この記事の核心です。告知情報の入力を慎重に扱えても、それだけでは足りません。AIが作った提案文・想定問答そのものが、募集規制に触れる文言になっていないかを確認する必要があります。保険業法第300条は、保険会社等・保険募集人・保険仲立人による保険契約の締結、保険募集等に関する禁止行為を定めており、次のように規定しています。

保険契約者又は被保険者に対して、虚偽のことを告げ、又は保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為(第一号)

保険契約者又は被保険者が保険会社等又は外国保険会社等に対して重要な事実を告げるのを妨げ、又は告げないことを勧める行為(第三号)

つまり、重要な事項を告げない行為(不告知)と、契約者に告知を妨げたり控えさせたりする行為は、AIが下書きした文面であっても、それを使う人が募集人である以上、この禁止行為の対象になりえます。「この程度の既往症なら書かなくても通ります」といった、AIがつい付け足しがちな一言が、Q&A想定問答や説明文にそのまま混ざっていないか——ここは入力情報の扱いとは別に、必ず人の目で確認する工程です。

募集規制との関係(一次情報)

  • 保険業法第300条第1項第1号:重要な事項を告げない行為(不告知)は禁止行為
  • 同項第3号:契約者・被保険者に告知を妨げ、又は告げないことを勧める行為も禁止行為
  • 保険業法第294条の3:募集人は顧客情報の適正な取扱いなど健全な運営のための措置を講じる義務がある

線引き——していい業務/立ち止まる業務

3つの問いと募集規制の確認をあわせると、実際にどう分かれるかを表にしておきます。

○ していい業務
  • ・契約更新のお知らせ文・一般的な保険用語の説明文の下書き
  • ・個人の告知情報を含まない一般論としてのQ&A想定問答のたたき台
  • ・「50代・喫煙者」のように記号化した設定での商品比較の相談
  • ・学習に使わない設定+所属先のルールで許可された範囲での分析

告知情報を含まない、または外部に渡らない設定にした状態

× 立ち止まる業務
  • ・顧客の健康状態・病歴をそのまま貼って要約させる
  • ・告知を控えさせる文言が混ざっていないか未確認のまま使う説明文
  • ・所属保険会社・代理店のルールで確認していない使い方
  • ・無料版の初期設定のまま告知情報を扱う

重要事項の不告知・告知妨害にあたる文言が混ざりうる状態

図2していい業務/立ち止まる業務の線引き。告知情報の有無と、募集規制に触れる文言でないかの両方で判断する。

マル

結局、告知情報が絡む相談は全部AIに任せちゃダメってこと?

タイガー

そこまでは言い切れないよ。告知情報を伴わない業務から始めれば、多くの作業はAIに任せられる。更新案内文や一般的な想定問答のたたき台なら、この記事のQ1で止まる範囲だからね。

マル

告知情報を伴う相談は、ずっと手作業のまま?

タイガー

そうとも限らないよ。記号化した相談+学習オフの設定+所属先のルール確認の3つがそろえば、扱える範囲は広がる。ただ、AIが作った文面の最終チェックだけは、どんな設定でも人が行う工程として残しておいてほしい。

Comaruの実務ではこう判断している

Comaruでは、要配慮個人情報や業界特有の規制が絡む相談を受けるとき、まず「入力してよい情報」より先に「その業務は個人の告知内容を伴わずに進められないか」から検討します。相談段階では固有名詞・具体的な症状名を記号に置き換え、どうしても実データが必要な作業は、所属先のルールと学習設定を確認したうえで進める、という順番です。AIが作った文面は、専門用語の言い換えの精度だけでなく、「言っていないこと」——不告知や誘導にあたる一言が紛れていないか——まで含めて確認するのを徹底しています。

マル

「言っていないこと」まで確認するのって、結構手間じゃない?

タイガー

最初は手間に感じるけど、チェックする観点を3つ(告知情報の有無・ルール確認・文面の不告知/誘導)に絞っておけば、毎回ゼロから考えなくて済む。この記事のチャートも、その3観点をそのまま並べたものだよ。

業務を始める順番の目安

  • まず告知情報を伴わない業務(案内文・一般的な想定問答)から始める
  • 告知情報を伴う相談は、記号化・学習オフ設定・所属先ルールの確認をそろえてから
  • AIが作った文面は、不告知・告知妨害にあたる一言が混ざっていないかを必ず人の目で見る

まとめ:告知情報は「入力の是非」と「文面の是非」の両方で見る

保険代理店がAIに顧客の告知情報を扱わせてよいかは、①告知情報など要配慮個人情報の中身が入っているか、②所属保険会社・代理店のルールで許されているか、③入力先のAIが学習に使わない設定か——この3つで機械的に判断できます。ただし保険業界にはもう一段、④AIが作った文面自体が募集規制(保険業法300条)に触れないか、という確認が必要です。入力情報が安全でも、出てきた文面が不告知や告知妨害にあたる言い回しを含んでいれば、そこは別のリスクとして残ります。

多くの代理店が最初に直面するのは、①はい・②確認できていない、という組み合わせです。ここに当たったら、まず所属先にルールを確認するところから始めてください。逆に、告知情報を伴わない業務——更新案内文や一般的な想定問答づくり——から始めれば、確認すべき論点は募集規制に触れる文言かどうかの1点にしぼれます。

要配慮個人情報の扱い方の基本は個人情報保護法とAIの入力、同じく資格・守秘義務が絡む業種の判断は税理士・社労士がChatGPTに顧客データを見せてもいいのか、要配慮個人情報を記号化して扱う実例は介護記録にChatGPTを使っていい?にまとめています。無料版のまま使うなら最初にやるべき設定変更は「学習させない」設定の手順を参考にしてください。

30分無料相談では、今の代理店の業務のうち、AIに任せてよい範囲と所属先への確認が先に要る範囲を、実際の業務に合わせて一緒に整理できます。


参考(一次情報):e-Gov法令検索 保険業法

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・法令は改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。