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重要事項説明書の下書きをAIに任せてよいのか、宅建業法との関係

こんにちは、コマルです。「重要事項説明書の下書き、AIに書かせてもいいんですか? 宅建士の資格が要る仕事なのに」——不動産会社の方から、こういう相談をよくいただきます。結論から言うと、下書きをAIが作ること自体は禁止されていません。ただし、宅建業法にははっきりと「ここから先は有資格者でなければならない」という境目が書かれています。今回は、その境目がどこにあるのかを、法律の原文を確認しながらタイガーとマルの対話で整理します。

そもそも「重要事項説明」って何のためにあるの?

マル

重要事項説明書って、契約書とは別にあるやつだよね? なんでわざわざ別に作るの?

タイガー

買う人・借りる人が、リスクや制限を知らずに契約してしまうのを防ぐためだよ。権利関係・法令上の制限・インフラの整備状況……こういう情報は素人には分かりづらい。だから宅建業法という法律が、契約が成立するまでの間に必ず説明することを義務づけているんだ。

マル

法律で決まってるんだ。じゃあ、その説明って誰でもできるわけじゃないの?

タイガー

そう、そこが今日の本題。条文をそのまま見てみようか。
① 下書き

重要事項説明書・37条書面の文章を作る

物件概要・周辺環境などの説明文

② 内容の確認

登記簿・都市計画図など一次資料と突き合わせる

ここから先は宅地建物取引士の法定業務(宅建業法35条・37条)
③ 説明(35条)

宅地建物取引士が、契約成立までの間に説明する

④ 記名(37条)

宅地建物取引士が、契約書面に記名する

図1重要事項説明書ができるまでの流れ。下書きの作成と、法律で定められた「説明」「記名」は別の作業として整理できる。

重要事項説明の役割

  • 契約前に、物件のリスクや制限を買主・借主に伝えるための法定の手続き
  • 根拠は宅建業法35条。素人には判断しづらい情報を、契約前に必ず説明させる仕組み

宅建業法35条——説明できるのは宅地建物取引士だけ

マル

条文には、なんて書いてあるの?

タイガー

e-Govの原文を確認すると、こう定められている。

宅地建物取引業者は……その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面……を交付して説明をさせなければならない。(宅地建物取引業法第35条第1項)

マル

「宅地建物取引士をして」……つまり、取引士じゃない人が説明したらダメってこと?

タイガー

そのとおり。条文の主語は宅建業者だけど、実際に説明する行為は「宅地建物取引士をして」させなければならないと名指しで決まっている。ここは会社の判断で省略できる部分じゃないんだ。

マル

じゃあ、AIが下書きを書くのは、この条文に触れちゃうの?

タイガー

条文が縛っているのは「説明する行為」であって、「文章を準備する行為」じゃない。下書きを誰が作ったかは、条文には書かれていないんだ。

35条が定めていること

  • 重要事項の説明は「宅地建物取引士をして」させなければならない(宅建業法35条1項)
  • 条文が縛るのは「説明する行為」。下書きを準備する作業自体は条文の対象外

37条書面も同じ構造——記名するのは取引士

マル

契約が決まったあとに渡す書面もあるよね? あれも同じ決まりなの?

タイガー

37条書面(契約書面)のことだね。これも条文を見てみよう。

宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない。(宅地建物取引業法第37条第3項)

マル

「記名」って、名前を書くだけ? それだけでいいの?

タイガー

形式は記名だけど、意味は重い。記名した取引士が、その書面の内容に責任を持つという印だからね。文章そのものを誰が書いたかとは別に、最後に「これで間違いない」と確認して名前を記す人が、法律で決まっているんだ。

37条が定めていること

  • 契約書面(37条書面)は、作成したら宅地建物取引士に記名させなければならない(宅建業法37条3項)
  • 記名は「この内容に責任を持つ」という意思表示。誰が下書きを書いたかとは別の話

じゃあ、AIに任せていいのはどこまで?

マル

整理すると、法律が決めてるのは「説明する人」と「記名する人」で、「下書きを書く人」じゃないんだね。じゃあ具体的に、どこまでAIに任せていいの?

タイガー

目安を作ってみよう。物件の周辺環境や設備の説明文みたいな、一般的な言い回しを整える部分はAIに向いている。逆に、権利関係や法令上の制限みたいな、物件ごとの事実確認が要る部分は、AIが下書きを作っても、必ず取引士が原本(登記簿や都市計画図など)と突き合わせて確認しないといけない。
○ AIに任せてよい部分
  • ・物件概要・周辺環境の説明文の言い回しを整える
  • ・設備状況(飲用水・電気・ガス等)の説明文の下書き
  • ・過去の書面と表現をそろえる文章整形

一般的な表現を整える作業。事実そのものは含まれていない前提

△ 取引士が必ず確認・実行する部分
  • ・登記された権利関係の内容(35条1項1号)
  • ・法令上の制限の概要(35条1項2号)
  • ・重要事項の説明そのもの(35条)と契約書面への記名(37条)

一次資料との事実確認・法定の説明・記名は取引士本人の仕事

図2AIに任せてよい部分と、宅地建物取引士が必ず確認・実行する部分の線引き。

マル

AIが下書きを間違えてたら、どうなるの?

タイガー

説明した内容に誤りがあれば、責任を負うのは説明した宅地建物取引士本人。「AIが書いた文章だから」は理由にならない。だからこそ、AIに下書きさせた文章ほど、事実確認は取引士が一次資料に当たって行う必要があるんだ。

任せてよい/確認が必要な目安

  • AIに任せやすい:物件概要・周辺環境・設備状況などの説明文の言い回しを整える作業
  • 取引士が必ず確認:登記された権利関係、法令上の制限など、一次資料との事実確認が要る部分
  • 誤りの責任は、説明・記名した取引士が負う。AIが書いたことは免責の理由にならない

Comaruの実務ではこう考えている

Comaruは不動産業の専門家ではありません。ただ、資格や法令が絡む業務のAI活用を設計するとき、業種を問わず共通して助言している型があります。「AIには下書きと言い回しを整える作業を任せ、最終確認と責任の所在は必ず有資格者に残す」という役割分担です。税理士・社労士がChatGPTに顧客データを見せてもいいのかで扱った守秘義務の話も、根っこの考え方は同じでした。

マル

業種が違っても、考え方は同じなんだね。

タイガー

そう。AIが作った文章をそのまま出すんじゃなくて、責任を持てる人が確認してから出す——この一手間があるかどうかが、業種を問わず分かれ目になるんだ。

物件情報や取引当事者の氏名・連絡先をAIに入力する際の注意は、AIに入れていい情報はどこまで?で扱った線引きがそのまま当てはまります。個人が特定できる情報は、記号化するなどの工夫をしてから相談する習慣をつけてください。

まとめ:下書きはAI、説明と記名は取引士

重要事項説明書・37条書面の下書きをAIに任せること自体は、宅建業法に違反しません。条文が名指しで縛っているのは「宅地建物取引士をして説明させる」「宅地建物取引士に記名させる」という2点で、下書きを誰が作るかは対象外だからです。

ただし、これは「AIに丸投げしていい」という意味ではありません。権利関係や法令上の制限のように、物件ごとの事実確認が要る部分は、AIの下書きをそのまま出さず、取引士が一次資料に当たって確認する必要があります。説明・記名した以上、誤りの責任は取引士が負うことに変わりはありません。「どこまでがAIの下書きで、どこからが有資格者の仕事か」を、作業に入る前に一度整理しておくことをおすすめします。

物件情報や取引先の情報をAIに入力するときの線引きはAIに入れていい情報はどこまで?、入力した情報が学習に使われる仕組みはChatGPTに会社の情報を入れて大丈夫?、他の資格業務で似た構造の線引きを扱った例は税理士・社労士がChatGPTに顧客データを見せてもいいのか、個人情報の線引きの考え方は介護記録にChatGPTを使っていい?にまとめています。

30分無料相談では、「うちの重要事項説明の作成フローで、どこまでAIに任せてよいか」を、実際の業務の流れに合わせて一緒に整理できます。


参考(一次情報):e-Gov法令検索 宅地建物取引業法(第35条第1項・第37条第3項)

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・法令は改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。