こんにちは、コマルです。よく聞かれる質問を順に答えます。今回のテーマは「クリニックの受付・紹介状づくり」です。この記事が扱うのは受付や書類づくりといった事務作業だけで、診断や治療方針の判断は対象外です(理由はQ7で説明します)。公的ガイダンスをもとに、10の質問に答えます。
Q1. 受付業務全般にChatGPTを使ってもいいの?

マル

タイガー
Q2. 紹介状の下書きに、患者の情報をそのまま貼り付けて使っていい?
やめたほうがいいです。紹介状には患者の氏名・病名・治療経過などが含まれ、病歴は個人情報保護法上とくに重い区分「要配慮個人情報」にあたります。
この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。(個人情報保護法第2条第3項)
個人情報保護委員会は、生成AIサービスが入力内容を自らの学習に使う設定になっている場合、入力する行為自体が提供者への「提供」にあたりうると整理しています。仕組みの詳細は個人情報保護法とAIの入力で解説しました。
Q3. じゃあ、紹介状づくりにAIはまったく使えない?

マル

タイガー

マル

タイガー
似た判断は介護施設の記録でも起きていて、介護記録にChatGPTを使っていい?で詳しく整理しています。
- 予約案内・待ち時間の説明など、定型的な応答
- 氏名や病状を含まない問診票フォーマットの下書き
- 患者情報を記号化したあとの、紹介状の言い回し・体裁のたたき台
- 匿名化した架空事例を使ったスタッフ向けマニュアル・研修資料
- 患者の氏名・病名・治療経過をそのまま入力した紹介状の下書き
- 症状の個別相談に対する回答(医療的な判断に近づく)
- 診断・治療方針の決定そのもの(医師の専門判断の領域)
Q4. 患者が紹介状を自分で他院に持って行く場合、AIに入力した情報の扱いは変わる?

マル

タイガー
個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスは、患者が紹介状を持参して他の医療機関に渡すケースを、医療機関どうしのあいだで本人の黙示の同意が得られている例として挙げています。一方、その紹介状をAIサービスに入力する行為が入力先への「提供」にあたるかどうかは、Q2・Q3で説明したまったく別の論点です。
Q5. 予約の電話対応やチャット対応にAIを使うのは?
診療時間・アクセス・持ち物といった一般的な質問への自動応答は、患者ごとの情報を含まないので使いやすい部類です。一方、患者個別の症状の相談に踏み込む対応は、Q7で説明する医療的な判断に近づくため、慎重に扱ってください。
Q6. 問診票の下書きや院内掲示文の作成は?
これも使いやすい部類です。問診票のフォーマットや院内掲示の文言は、特定の患者の情報を含まない一般的な文章だからです。患者が記入した後の問診票の中身(症状や既往歴)をAIに入力するのとは、まったく別の話になる点だけ注意してください。
Q7. 診断や治療方針の判断にAIを使うのはどう?

マル

タイガー

マル

タイガー
Q8. 無料のChatGPTと有料版、クリニックで使うならどっち?
患者に関わる情報を扱う可能性がある以上、入力内容が学習に使われない設定(法人向けプランか、個人向けプランのオフ設定)を選ぶのが安全です。無料版のまま使う場合の設定手順は「学習させない」設定の手順にまとめています。
Q9. スタッフ向けマニュアルや研修資料づくりは?
実際の患者ケースをそのまま教材にするのは避け、匿名化した架空の事例を使えば安心して任せられます。受付対応の想定問答集や、新人スタッフ向けの手順書づくりに向いています。
Q10. 導入する前に、まず何を確認すればいい?
ここまでの内容を、導入前のチェックリストにまとめました。
4つとも「はい」と言えれば、導入は進めて大丈夫。言えないものがあれば、そこを先に決める。
10の質問を1枚で振り返る
- 「受付」という業務名ではなく、扱う情報の中身(氏名・病名を含むか)で判断する(Q1)
- 紹介状に患者情報をそのまま入力するのはNG。記号化した文面のひな形づくりまでにとどめる(Q2・Q3)
- 医学的な内容の最終判断は常に医師が行う。AIが作るのは下書きの土台まで(Q3)
- 診断・治療方針の判断はこの記事の対象外。事務作業と医療行為の判断は切り分ける(Q7)
- 入力内容が学習に使われない設定を選ぶ(Q8)
まとめ:「受付」ではなく「情報の中身」で線を引く
クリニックの受付・紹介状づくりにAIをどこまで使えるかは、業務の名前ではなく、扱う情報の中身で決まります。患者の氏名や病名を含む紹介状の下書きをそのまま入力するのは避け、記号化した文面のひな形づくりや、患者情報を含まない予約案内・院内掲示文に使う範囲であれば、リスクを抑えて活用できます。
そして、AIが手伝えるのはあくまで書類や文面の事務作業までです。診断や治療方針といった医療行為の判断は、常に医師が行うべき領域として切り分けてください。この境目さえ最初に持っておけば、新しい場面に出会っても迷わず判断できます。
要配慮個人情報の扱い方は個人情報保護法とAIの入力、近い業種の判断は介護記録にChatGPTを使っていい?、税理士・社労士がChatGPTに顧客データを見せてもいいのかもあわせてご覧ください。
30分無料相談では、「うちの受付業務でAIをどこまで使ってよいか」を、実際に扱っている書類や情報に合わせて一緒に整理できます。お気軽にご相談ください。
参考(一次情報):個人情報保護委員会・厚生労働省 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(令和8年4月一部改正)
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家にご確認のうえで対応してください。制度・ガイドラインは改定されることがあるため、実際の運用にあたっては最新の公表情報をご確認ください。
この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。
