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AIに発注量を予測させたいが、うちのExcelでは無理だった話

こんにちは、コマルです。先月、こんな相談がありました。「AIに発注量を予測させたいんです。これまでのExcelのデータを見せれば、いい感じに計算してくれますよね?」——在庫と発注を長年の勘だけで回してきた会社が、そろそろ仕組みに変えたいと考えたときの、よくある入り口です。今回は、この相談がどこでつまずき、何を変えれば道が開けたのかを、実際の流れに沿って振り返ります。登場する会社の業種・規模・数字は、特定できないよう変えています。

「勘と経験」から「AIに聞く」に変えたかった

相談してきたのは、日用品を中心に扱う小さな卸売会社でした。発注の量は、長年その仕事をしてきた1人の担当者の勘と経験で決まっていて、多めに仕入れて売れ残る月もあれば、逆に欠品してお客さんに謝る月もある。担当者もそろそろ引退が見えてきていて、「その人にしか分からない発注」から抜け出したいというのが、そもそもの悩みでした。

マル

今のAIって表計算も読み込めるんだよね? これまでのExcelをそのまま渡せば、続きを予測してくれそうな気がするけど。

タイガー

渡すデータの中身次第だよ。この相談、実はまさにそこでつまずいたんだ。

渡してみたら、もっともらしい数字が返ってきた

会社に残っていたのは、商品ごとの「月次の売上合計」がまとまったExcelでした。担当者はそのシートをそのままAIに渡し、「来月、この商品はいくつ発注すればいいか」を聞いてみました。返ってきたのは、商品ごとに数量が並んだ、いかにも仕事ができそうな一覧です。

マル

おお、ちゃんと商品ごとに数字が出てる。もうこれで発注できそうじゃない?

タイガー

数字が具体的に並んでいることと、その数字が正しいことは、別の話なんだ。この後、担当者が「あれ、おかしいぞ」と気づく場面が出てくるよ。
1
相談を受けた頃発注は担当者の勘と経験まかせ多めに仕入れて売れ残る月も、欠品して謝る月もある状態が続いていた
2
AIに月次データを渡したもっともらしい発注数が返ってきた商品ごとに具体的な数量が並び、一見そのまま使えそうに見えた
3
在庫を見て違和感在庫が十分な商品が「多めに発注」に同じ商品が表記ゆれで3つに分かれて集計されていた
4
さらに掘ってみると欠品も特売も記録に残っていなかった「売れなかった」と「売り切れて売れなかった」が同じ「0」に見えていた
5
向き合うと決めてからまず欠品に印を付けることから開始予測を急がず、記録の器を少しずつ積み上げる方針に切り替えた
図1今回のケースの流れ。「AIに渡した」時点と「その数字が使える」時点は、イコールではなかった。

掘ってみると、器がそもそも足りなかった

担当者が引っかかったのは、ある定番商品でした。倉庫にはまだ十分な在庫が残っているのに、AIの回答では「多めに発注」となっていたのです。もとのExcelを見直すと、同じ商品なのに月によって「Aティッシュ」「Aティシュー」「A ティッシュ(旧)」と表記がバラバラで、集計上は3つの別商品として扱われていました。売上が3つに分かれて計上されていたぶん、1つあたりの数字が実際より少なく見えていたのです。

マル

同じ商品なのに、書き方が違うだけで別物として数えられてたってこと?

タイガー

そういうこと。AIも人間の担当者も、渡された表の上でしか判断できない。表記が割れていれば、実態も割れて見えるんだ。

もう一つ、担当者を悩ませたのは別の商品でした。ある月だけ極端に売上が少なく、AIはそれを「需要が落ちている商品」と判断していました。ところが担当者の記憶では、その月は人気で欠品していたはずの商品です。

マル

売れなかったのと、売り切れて売れなかったのって、Excelの上では同じ「0」になっちゃうの?

タイガー

そこが一番の落とし穴なんだ。「欠品で売れなかった」も「特売で売れすぎた」も、記録に残っていなければ、ただの数字にしか見えない。AIに聞く前に、そもそも人間にも見分けがつかない状態だったんだよ。

どうすべきだったか——予測の前に、記録の器を整える

Comaruが伝えたのは、「AIが使えない」という話ではなく、「予測を頼む前に、記録の器がまだ足りていない」という順番の話でした。この会社の場合、直す必要があったのは主に4つです。①商品名を1つに統一する台帳を作る、②欠品だった日・月が分かる印を残す、③特売など通常と違う売り方をした期間が分かる印を残す、④月ごとの合計だけでなく、できれば週単位で数字を残す。

マル

それって結構な手間だよね……。そこまでやるなら、別にAIじゃなくてもよくない?

タイガー

気持ちは分かるけど、話は逆なんだ。この4つを整えるところにこそ、AIは使える。表記のゆれた商品名を候補ごとにまとめて見せてもらったり、どの月が特売っぽいかを一緒に洗い出したり。予測そのものは、器が整ってからの話でいい。
記録の器が足りないまま印を1つずつ整えた後
商品名は月ごとに表記がバラバラ
1商品=1名称の台帳で統一
欠品も「0」として記録される
欠品だった印を残し、需要と区別できる
特売の月も通常月と同じ扱い
特売期間の印を残し、通常需要と分けられる
残るのは月次の合計だけ
週単位でも数字を残す

Excelそのものをやめる必要はない。同じ表に「印」を1つ足せるかどうかが分かれ目になる。

図2記録の器を整える前と後。同じExcelでも、残しておく印が1つあるかどうかで、予測に使えるかどうかが変わる。

AIに発注予測を頼む前に整えるもの

  • 商品名を1つに統一する台帳(表記ゆれをなくす)
  • 欠品だった日・月が分かる印(「売れなかった」と「売り切れて売れなかった」を分ける)
  • 特売など通常と違う売り方をした期間が分かる印
  • 月次合計だけでなく、できれば週単位の数字

会社が最終的に決めたのは、いきなり全部を直すことではありませんでした。まずは今日の入力から、欠品だった商品には印を1つ付ける。それだけを、担当者みんなで始めることにしたのです。

マル

それくらいなら、明日からでもできそう。

タイガー

そう、それでいいんだ。器は一気に完成させるものじゃなくて、少しずつ積み上げていくもの。印が半年分たまった頃には、今回よりずっと信頼できる相談がAIにできるようになっているはずだよ。

まとめ:AIが使えないのではなく、記録の器が足りなかった

この相談でつまずいたのは、AIの能力ではありません。渡したExcelに、商品名のゆれ・欠品の記録・特売の記録がなく、「予測の材料」がそもそも器として足りていなかったことが原因でした。AIはもっともらしい数字を返してくれますが、渡された表の外にある事情までは分かりません。

だからといって、器を完璧に整えてからでないと何も始められないわけではありません。この会社がやったように、まずは「欠品に印を付ける」のような小さな1つから始めれば十分です。商品名の統一や週単位の記録も、AIに手伝わせながら少しずつ積み上げていけます。予測を急ぐより先に、今日から何を記録し始めるかを決めることが、いちばん近道です。

Excelでの管理に限界を感じ始めているサインの見分け方はExcel管理が限界を迎えたサイン、記録の器を仕組みに変えるときの費用感は業務システム開発の費用相場にまとめています。数字まわりでAIにどこまで任せてよいかは記帳のどこまでAIに任せていい?、AIを使った記録そのものの残し方はAIを使った記録、どこまで残せばいい?を参考にしてください。

30分無料相談では、「うちのExcel、AIに予測させられる状態かどうか」を、実際に残っているデータを見ながら一緒に確認できます。予測の前でつまずいている段階でも、お気軽にどうぞ。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。