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取引先への英語メールはAI翻訳でいいが、契約書はNGな理由

こんにちは、コマルです。「取引先への英語メール、ChatGPTに訳してもらって送った」——ここまでは、Comaruの周りでもよく聞く話です。ところが同じ調子で「じゃあ契約書の下訳も作っておいて」と言われると、答えは変わります。先に結論を、判断チャートで見せます。

これから訳したい文書取引先とやり取りする英語の文書

Q1 間違えても、すぐ言い直せる相手か

メール・チャット・見積送付の一言など

はい

AI翻訳で十分

違和感があれば次の一通で直せばよい

いいえ

次の問いへ

署名・捺印で確定する書面は要注意

Q2 法的な取り決めを定める条項が入っているか

権利義務・違約金・秘密保持など、契約書の本体部分

いいえ

下ごしらえには使ってよい

添付の案内文・カタログなど定型部分に限る

はい

AI翻訳だけで確定させない

訳語のズレ・正文条項・機密情報の3点が理由。専門家を通す

図1英語の文書をAI翻訳に任せてよいかの判断チャート。「間違えても取り返しがつくか」と「法的な取り決めを定める条項が入っているか」の2つの問いでたどる。

分かれ道は2つだけです。順番に見ていきます。

Q1:間違えても、すぐ言い直せる相手か

マル

タイガー、英語のメールってAI翻訳で送っちゃっていいの? なんか申し訳ない気もするんだけど。

タイガー

日常のやり取りなら、まず問題ないよ。見積送付の一言や、納期確認のメール程度なら、多少ぎこちない英語でも実害は小さい。おかしいと思われても「すみません、言い方が変でしたね」で直せばいい。

マル

じゃあ何でも訳していいってこと?

タイガー

そこが最初の分かれ目。「間違えても、すぐ訂正できるか」で見るんだ。メールなら次の一通で直せる。でも契約書は、そうはいかない。

「すぐ言い直せる」かどうかの目安

  • メール・チャット・見積送付の一言:訂正が次の一通で済む
  • 契約書・覚書・注文請書などの正式な書面:署名・捺印した時点で内容が確定する
  • 迷ったら「送った後、電話一本で直せるか」で判断する

Q2:署名した瞬間、内容が「確定」してしまうか

マル

契約書は言い直せないって、そんなに違うもの?

タイガー

かなり違うよ。契約書は署名・捺印した瞬間に、その文言どおりの内容で双方を拘束する。翻訳が間違っていても「言い方が変でした」は通用しない。約束した中身そのものが変わってしまうんだ。

マル

怖い……。じゃあ契約書は全部だめってこと?

タイガー

全部じゃないよ。次に話す3つの理由を踏まえて、専門家を通すべき部分と、AIで下ごしらえしていい部分を分けて考えるといいよ。

契約書の翻訳が危ない、3つの具体的な理由

契約書の翻訳が、メールの翻訳と決定的に違う理由は3つあります。

契約書の翻訳が危ない3つの理由

  • 権利義務を表す単語の訳し分けを間違えると、約束の強さが変わる
  • 原文と訳文のどちらが正式なものかが、契約書ごとに決まっている
  • 契約書自体が、秘密保持契約(NDA)の対象になりうる機密情報の塊である

1つ目は、権利義務を表す単語の訳し分けです。英文契約でよく使われる「shall」と「may」は、日本語にすると両方とも「〜する」に見えてしまいがちですが、法的な強さがまったく違います。shallは「しなければならない」という義務、mayは「してもよい」という裁量です。ここを取り違えると、本来は任意だった対応が義務として扱われたり、逆に守るべき義務が努力目標のように弱められたりします。

マル

そんな1語で、そんなに変わっちゃうの?

タイガー

変わるんだ。しかも厄介なのは、AI翻訳の文章はなめらかに読めてしまうから、訳語の強さがズレていても気づきにくいこと。読んで「意味は通っている」と、そのまま通してしまいがちなんだ。

2つ目は、原文と訳文のどちらが正式かという問題です。英語版と日本語版の両方を作る契約書には、多くの場合「解釈に食い違いが生じたときはどちらの言語を正文とするか」を定める条項が入っています。この条項を見落としたまま訳文だけを読んで合意すると、実際に効力を持つのは自分が読んでいない原文の方だった、という事態になりかねません。

3つ目は、契約書そのものが機密情報の塊であることです。取引先の名前、金額、契約条件——契約書には秘密保持契約(NDA)の対象になりうる情報がそのまま書かれています。一般向けのAI翻訳ツールにまるごと貼り付ける行為は、翻訳の精度以前に、秘密を守る約束そのものに抵触するおそれがあります。

例外——契約書でも部分的にAIを使える場面

マル

じゃあ契約書は、翻訳ソフトに一切触らせちゃだめってこと?

タイガー

そこまでではないよ。「取り返しがつくか」と「機密度」の2つの軸で見ると、部分的に使える場面もある。整理してみようか。
機密度が低い
(一般的な内容)
機密度が高い
(取引条件・NDA対象など)
すぐ言い直せる
(メール・チャットなど)
そのままAI翻訳でよい多少ぎこちなくても実害は小さい
機密は伏せてから訳す取引条件・金額は記号に置き換える
署名で効力が残る
(契約書・覚書など)
下訳としてなら可最終確認は必ず専門家が行う
AI翻訳だけで確定NG訳語のズレ・正文条項・機密情報が理由

法令・公的ガイドラインに基づく分類ではなく、Comaruが実務で使っている判断の目安です。迷ったら機密度が高い側として扱うのが安全です。

図2「取り返しがつくか」×「機密度」の組み合わせによる線引きの目安。契約書でも機密度が低い定型部分は下ごしらえに使える。

たとえば、契約書に添付する会社案内や商品カタログのような、機密度の低い定型文書は、AI翻訳で下訳を作ってから人が確認する、という使い方は現実的です。逆に、普段の英語メールでも、取引条件や金額など機微な内容を含む場合は、契約書に近い慎重さで扱うべきだとComaruは考えています。

部分的に使ってよい場面の目安

  • 契約書に添付する定型的な案内文・カタログなど、機密度が低い部分
  • 下訳はAIで作ってよいが、最終確認は必ず専門家(弁護士・契約書翻訳の専門会社)が行う
  • 権利義務・違約金・秘密保持など、条件そのものを定める条項には使わない

Comaruの実務ではこう判断している

契約書翻訳の是非を直接定めた法令や公的ガイドラインは見当たりません。ここは会社ごとの実務判断に委ねられている領域です。Comaruでは、取引先への日常のメール・見積の送付文はAI翻訳をそのまま使い、送信前に自分で読み直す程度にとどめています。一方、契約書・覚書のたぐいは、AI翻訳で全体の内容をざっくり把握する用途までは使いますが、実際に取り交わす文面は必ず専門家に依頼する、という線を引いています。

マル

「ざっくり把握」だけでも使っていいんだ?

タイガー

そう。この条項は何を言っているか、自分がまず理解するために使うのはいい。危ないのは、その訳をそのまま相手に渡したり、その訳を信じて署名したりすること。理解するための道具と、確定させるための道具は分けて考えるといいよ。

まとめ:判断は「取り返しがつくか」と「機密度」で決まる

取引先への英語メールと契約書の翻訳を分けて考えるべき理由は、印象論ではありません。①間違えたときにすぐ訂正できるか、②署名した瞬間に内容が確定してしまうか、③機密情報の塊を投げ込むことにならないか——この3点が、日常のやり取りと契約書とで根本的に違うからです。

日常の英語メールや見積送付の一言は、AI翻訳で十分です。一方、契約書は、権利義務を表す訳語のズレ・正文条項の見落とし・機密情報の入力という3つの理由から、最終的な文面は専門家を通すべきだとComaruは考えています。契約書のうち機密度の低い定型部分だけは、下ごしらえとしてAIを使う余地があります。

NDAを結んでいる相手の情報を扱う判断は秘密保持契約(NDA)を結んでいる相手の情報、AIに入れていい?、お客さんの情報を扱う契約書にAI利用の一文を足すかどうかはお客さんの情報を扱う契約書に、AI利用の一文を足すならで整理しています。「どこまでAIに任せていいか」という同じ形の悩みは、見積書はAIに作らせていい部分と、絶対に任せてはいけない部分やChatGPTに議事録を作らせる前に決める、社外に出せない一言にもまとめています。

30分無料相談では、取引先とやり取りしている英語の文書が、実際どこまでAIに任せてよいかを、書類の性質に合わせて一緒に整理できます。契約書の翻訳をどこまで社内で進めていいか迷っている方は、お気軽にどうぞ。


※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。契約書の翻訳・解釈が問題になる場合は、必ず弁護士等の専門家にご確認ください。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。