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「AIに仕事を奪われる」と反対する社員に、何を話せばいいか

こんにちは、コマルです。先月、こんな相談がありました。「AIを一部の業務に入れようとしたら、長く働いてくれている社員から強い反対にあい、話が止まってしまった」というものです。業種や規模が分かる書き方は避けてほしいとのことなので、ここでは詳しい会社の情報には触れず、実際にあったやり取りの流れだけをお伝えします。

その会社の社長は、月末にまとめて発生する見積書づくりの一部をAIに任せられないかと考えていました。ここ数年で件数が増え、残業が常態化していたからです。方針はすでに固まっていて、あとは進めるだけのはずでした。ところが、その見積書づくりを10年以上ひとりで担ってきたベテラン社員から、はっきりとした反対が返ってきました。「AIに仕事を取られるのは困ります」——そう言われたそうです。

マル

えっ、面と向かって「仕事を取られる」って言われたんだ。それは社長も困っちゃうよね。

タイガー

うん。だから社長は最初、その言葉をそのまま受け取って「効率化のためだから」って何度も説明したんだって。でも、それが逆効果だったらしいんだよね。

最初にやったこと——「効率化のため」を繰り返す

社長がまず取った行動は、AIを入れる理由を丁寧に説明することでした。件数が増えて残業が増えていること、AIに任せれば早く帰れること、会社にとってもコストの負担が減ること——筋の通った説明を、機会を変えて何度か伝えました。

それでも、反対は収まりませんでした。会議の場で明確に反対を口にすることはなくなった代わりに、AIで作った下書きを見せても「ここが違う」「これは使えない」という細かい指摘だけが増え、実際に使う場面には一向に進まない。表向きは静かになった分、かえって扱いにくくなっていました。

1AI導入の方針を伝える見積書づくりの一部を任せたいと説明
2ベテラン社員が反対「仕事を取られるのは困ります」
3理由を繰り返し説明重ねるほど態度は静かに固くなった
ここが転機直接、理由を聞く社長が本人に理由を尋ねた
5任せる範囲を本人が決める最初の当事者として線引きを委ねた
1相談があった会社で実際に起きた流れ。社長が理由を説明するほど、反対は表向き静かに、しかし固くなっていった。

マル

説明すればするほどこじれるって、なんか変じゃない? 理屈は間違ってないのに。

タイガー

理屈が間違ってなかったから、逆にこじれたんじゃないかな。相手が困っていたのは、効率が悪いことじゃなかったのかもしれない。

反対の理由を、直接聞いてみた

行き詰まった社長は、ある日思い切って、その社員に直接聞いてみました。「AIに仕事を取られるのが心配なんですか」と。

返ってきた答えは、社長の想像とは違うものでした。その社員が気にしていたのは、自分の仕事が無くなることそのものではなく、「10年かけて積み上げたやり方を、確認もされずに置き換えられること」でした。見積書には、書類には出てこない判断——この取引先には少し余裕を持たせる、この時期は材料費の変動を見て調整する、といった経験の積み重ねが入っていたのです。それを一言も聞かれないままAIへ差し替えられることが、「自分のやり方を否定された」と感じさせていました。

マル

あ……それって「取られる」じゃなくて「聞かれずに決められた」って感覚だったんだ。

タイガー

そう。だから「効率化のため」という理由をいくら重ねても届かなかったんだと思う。相手が欲しかったのは効率の説明じゃなくて、「あなたのやり方を聞かせてほしい」という一言だったんじゃないかな。

変えたあとにやったこと——最初の当事者にする

理由が分かってから、社長は進め方を変えました。AIに何を任せて、何を任せないかを、社長ではなくその社員自身に決めてもらうことにしたのです。まず手間のかかる下書きの部分だけAIに作らせ、金額の最終判断と取引先ごとの調整は今までどおりその社員が行う——という線引きを、本人の言葉で決めてもらいました。

結果として、その社員は完全に賛成へ転じたわけではありません。今でも「AIの下書きは半分くらいしか使わない」と言っているそうです。それでも、以前のように無言で使わない、という止まり方はなくなりました。

マル

えー、それって解決したって言えるのかな。半分しか使ってもらえてないんでしょ?

タイガー

正直、そこは僕もまだ迷ってる。全員が最後に納得する、という終わり方にはならなかった。でも、無言で止まっていた状態からは動いた。それで十分なのか、もっとやれることがあったのか——社長自身も、今も答えを探しているところみたいだよ。

最初にやったこと

  • 理由を説明する回数を増やす
  • 「効率化のため」を繰り返す
  • 線引きは社長が決めて伝える

結果:反対は表向き静かに、固くなった

変えたあと

  • まず反対の理由を直接聞く
  • 何を任せるか、本人に決めてもらう
  • 線引きは本人の言葉でつくる

結果:無言で止まる、ことはなくなった

ただし「変えたあと」も全員が完全に納得したわけではない。半分は今も本人のやり方が残っている。

2社長のやり方のビフォーアフター。変わったのは「説明の量」ではなく「誰が線引きを決めるか」だった。

Comaruの実務ではこう考えている

Comaruも、自分の作業をAIに任せるとき、同じ迷いにぶつかります。相手は自分自身なので「反対する社員」はいませんが、長くやってきたやり方——例えば見積りの文面づくりや、相談の受け方など——をAIに渡すかどうかを決めるとき、自分の判断がいちばん入っている作業ほど、渡すのに時間がかかるのは同じです。

だからこそ、他人にAIを勧める立場のときは、まず「なぜ反対するのか」を聞くようにしています。理由が「仕事を奪われる不安」なのか、「積み上げたものを聞かれずに決められた感覚」なのかで、その先の話し方はまったく変わるからです。

マル

でも、聞いても本音を言ってくれない人もいそうだよね。

タイガー

それは、うん、あると思う。今回は、たまたま社長が直接聞けたから分かったこと。聞いても出てこない場合にどうするかは、正直まだComaruの中でも決まった答えがないんだ。

反対する社員と話す前に

  • 「仕事を奪われる不安」だと決めつけず、まず理由を直接聞く
  • 反対の正体は「積み上げてきたやり方を聞かれずに決められた感覚」であることが多い
  • 説明を重ねるより、任せる範囲を本人に決めてもらう方が動くことがある

まとめ:説明を重ねるより、聞くことから

「AIに仕事を奪われる」という反対に、効率化の理屈で応えようとすると、かえって話が進まなくなることがあります。今回のケースで動いたのは、理由を説明する量を増やしたときではなく、社長が直接理由を聞き、任せる範囲の線引きを本人に委ねたときでした。

反対する人を「分かっていない人」として扱わず、その人が積み上げてきたものに敬意を払うところから話を始めると、少なくとも話が止まった状態からは動き出せます。全員が最後まで納得するとは限らない、というのも正直に書いておきます。

任せる範囲の線引きをどう決めるかはAIの分身に「やらせないこと」を決める、AIを入れた最初の期間に何を測るかは社内にAIを入れる最初の30日、誰が担当して進めるかで迷ったらAI導入は誰が担当する?もあわせてご覧ください。

30分無料相談では、社内の反対や進みにくさをお伺いしたうえで、どこから聞き方を変えればいいかを一緒に整理します。うちも同じような空気だ、と思った方はお気軽にどうぞ。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。