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AIの分身に「やらせないこと」を決める——任せる範囲の線引き

こんにちは、コマルです。AIに仕事を分けて任せる話はAIで分身を持つに、任せ方の設計はAIへの「任せ方」を設計するに書きました。今日はその裏側——渡さないと決めている仕事の話です。

任せる範囲を広げていくと、あるところで気づきます。うまくいっている理由は「たくさん任せたから」ではなく「渡さない線がはっきりしているから」だ、と。線が曖昧なまま範囲だけ広げると、成果物は増えるのに信用が減っていきます。物知り猫のタイガーと好奇心旺盛なマルと一緒に整理します。

マル

せっかくAIがいるのに、わざわざ「やらせないこと」を決めるの?もったいなくない?

タイガー

逆なんだ。線を決めるから、それ以外を安心して全部渡せる。線が曖昧だと、結局ぜんぶ細かく確認することになって、任せた意味がなくなるんだよ。

1. 分身に渡さない、4つの領域

コマルが渡していないのは、この4つです。

事実の最終確認日付・金額・制度の要件は一次情報で人が確かめる
お金と約束見積の最終金額・納期の確約・契約の文言
人に関わる判断評価・採用・注意。渡せない事情が必ず残る
「らしさ」の決定何を載せ、どう言うか。正解はAIの中にない

草案を作らせるのは構いません。渡さないのは「出すかどうかを決めること」です。

1AIの分身に渡さない4領域。共通するのは「間違えたときに取り返しがつかない」こと。

① 事実の最終確認

AIは、それらしい嘘を自信満々に書きます。日付、金額、制度の要件、他社の状況——外に出す事実は、必ず人が一次情報で確かめます

うちのブログで補助金の記事を書くときも、公募要領の原文に必ず当たっています。二次情報の通説がそのまま間違っていたことが、実際に何度もありました。

② お金と約束

見積もりの最終金額、納期の確約、契約の文言。ここは相手のある話で、間違えると謝って済みません。AIに草案を作らせるのは構いませんが、出すかどうかを決めるのは人です。

③ 人に関わる判断

評価、採用、注意すること。相手の事情や経緯を全部は渡せませんし、渡すべきでもありません。材料が欠けた状態で出た結論は、もっともらしいだけで役に立ちません。

④ 「らしさ」の決定

何を載せて何を載せないか、どんな言い方をするか。AIは「一般的に良さそうな表現」は作れますが、うちらしいかどうかの正解は持っていません

マル

4つとも、間違えたら戻せないことばっかりだね。

タイガー

そこが共通点なんだ。やり直しが効くかどうか——この一点で線を引いている。

ここまでのまとめ

  • 渡さないのは「事実の最終確認」「お金と約束」「人に関わる判断」「らしさの決定」
  • 共通するのは、間違えたときに取り返しがつかないこと
  • 草案を作らせるのは可。決めるのは人

2. 線の引き方は「戻せるかどうか」だけ

新しい作業を任せるか迷ったとき、判断はこの1問で足ります。もし間違っていたら、あとから戻せるか

判断はこの1問だけ間違っていたら、あとから戻せるか

戻せる → 任せてよい

下書き・調べ物の一次整理・見直し・社内向けの試作。 間違っていても直せば済みます。

戻せない → 人が決める

送信・公開・契約・支払い。操作は簡単でも、 押したあとに取り消せません。

見るのは難しさではありません。難しい調べ物は戻せますが、 簡単な送信ボタンは戻せません。

2任せるかどうかの判断。難しさではなく、間違えたときに戻せるかで決める。

マル

「難しい仕事は任せない」じゃないんだ?

タイガー

そこがよく誤解されるところでね。難しさと危なさは別物なんだ。調べものはけっこう難しいけど、間違っていたら直せばいい。一方、送信ボタンを押すのは簡単だけど、送ってしまったら戻せない。危ないのは後者だよ。

マル

簡単なことのほうが危ないこともあるんだ……。

タイガー

だから「AIは難しいことができない」という考え方だと、線を引き間違える。見るのは難しさじゃなくて、やり直しが効くかどうかなんだ。

ここまでのまとめ

  • 判断の基準は「間違っていたら戻せるか」の1問だけ
  • 難しさと危なさは別物。簡単な操作ほど不可逆なことがある
  • 戻せるなら任せてよい。戻せないなら人が決める

3. 実は渡していい、渡せていないもの

線引きの話をすると、慎重な方向にばかり寄りがちなので、逆も書いておきます。渡していいのに人が抱えたままになりがちな仕事があります。

  • 下書き全般——ゼロから書くのがいちばん時間を食います。直すほうがずっと速い
  • 調べ物の一次整理——最終確認は人がやるとしても、集めて並べるところは渡せます
  • 見直し・粗探し——複数の視点で同時にチェックさせられます。人が何度も読み返すより漏れが減ります
  • 同じ形の繰り返し——毎回同じ体裁で作るものは、型を渡せば十分に回ります

マル

こう見ると、抱えこんでる仕事けっこうあるかも……。

タイガー

みんなそうだよ。危ないところを1回はっきり決めておくと、それ以外を思い切って渡せるようになる。線引きは制限じゃなくて、任せるための土台なんだ。

渡す量を増やすときは、渡す文脈の量にも気をつけてください。何を渡して何を捨てるかはAIの使用量が増える本当の理由にまとめました。

ここまでのまとめ

  • 下書き・調べ物の一次整理・見直し・定型の繰り返しは、もっと渡してよい
  • 危ない線を先に決めておくと、それ以外を思い切って渡せる
  • 線引きは制限ではなく、任せるための土台

4. 線は一度決めたら終わりではない

最初は広めに引いておいて、慣れてきたら少しずつ動かします。実際、コマルも最初は下書きすら全文を読み直していましたが、いまは種類によって確認の深さを変えています。

ただし、①〜④の4領域だけは動かしていません。ここを動かした瞬間に、AIを使っていることが弱点に変わるからです。

社内で運用する場合は、この線を1枚の紙にしておくと共有が早くなります。ルールのひな形は小さな会社の生成AI利用ルールに、誰がその線を決めるかはAI導入は誰が担当する?に書きました。外部に頼む場合の線引きはChatGPT活用支援は何をしてくれる?が参考になります。

まとめ

  • 任せる範囲を広げるほど、渡さない線をはっきりさせることが効いてくる
  • 渡さないのは事実の最終確認・お金と約束・人に関わる判断・らしさの決定の4つ
  • 判断基準は「間違っていたら戻せるか」。難しさと危なさは別物
  • 下書き・一次整理・見直し・定型作業は、もっと渡していい
  • 線は動かしてよい。ただし4領域だけは固定する

AIをうまく使っている状態というのは、たくさん任せている状態ではなく、任せる場所と握る場所がはっきりしている状態だと思っています。

30分無料相談では、「うちの仕事だと、どこまで任せてよさそうか」を、実際の業務に当てて一緒に線を引くこともできます。まだ使い始めたばかりの段階でも大丈夫です。

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