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一度AIをやめた会社が、もう一度始めるときに変えること

こんにちは、コマルです。少し前、こんな相談がありました。「一度AIを試してみたけれど、半年ほどで誰も使わなくなり、そのまま立ち消えになった。もう一度、同じように始めていいものか」というものです。業種や規模が分かる書き方は避けてほしいとのことなので、ここでは詳しい会社の情報には触れず、実際にあったやり取りの流れだけをお伝えします。

半年前、最初に選んだのはお客様向けの仕事だった

最初にAIを試したとき、その会社が選んだのは、問い合わせへの返信文をAIに下書きさせる、という使い方でした。件数が多く、返信に時間がかかっていたことに加えて、「効果がいちばん分かりやすい」という理由でこの業務が選ばれました。当時の判断としては、筋が通っていたと思います。効果を早く見せたい場面で、目立つ業務から始めるのは自然な発想です。

マル

目立つ仕事から始めるのって、悪いことじゃないよね?

タイガー

うん、判断そのものは間違っていないよ。効果を早く見せたいなら、目立つところから、というのは筋が通っている。問題は、そのあとに起きたことだったんだ。

数か月で、誰も開かなくなった

使い始めて数か月たったころ、AIが作った返信の下書きが、いつもよりそっけない言い回しのままお客様に届いてしまったことがありました。大きなクレームにはなりませんでしたが、それを見た担当者の間に「間違えたら、お客様に直接伝わってしまう」という不安が広がりました。誰かが「もうやめよう」と号令をかけたわけではありません。ただ、下書きを直す手間を惜しんで自分で書く人が少しずつ増え、気づけば誰もAIを開かなくなっていました。

1目立つ業務を選ぶお客様への返信文の下書きを任せる
2数か月、問題なく稼働使う人も少しずつ広がっていた
ここでつまずいたそっけない返信が1件届く大きなクレームにはならなかった
4直す手間を惜しむ人が増える自分で書いたほうが早いと感じ始める
5誰も開かなくなる「やめます」という宣言はなかった
1最初の挑戦から、静かに立ち消えるまでの流れ。誰かがやめようと決めたわけではなかった。

マル

誰も「やめます」って言ってないのに、終わっちゃったんだ。

タイガー

そう、それがいちばん厄介なところでね。宣言して終わったわけじゃないから、"何がまずかったのか"を誰も振り返らないまま終わってしまったんだ。

半年後、また話が出た

それから半年ほどたって、別の担当者から「また試してみたい」という声があがりました。今度は、以前AIの下書きを扱っていた担当者ではなく、当時は少し離れた場所から様子を見ていた人からの申し出でした。ただ、以前に下書きを見ていた人たちの反応は微妙だったといいます。口には出さないものの、「また同じことをやるんですか」という空気が漂っていたそうです。

マル

一度、みんなが離れていったことをもう一度やるのって、勇気いるね……。

タイガー

うん。しかも、まずかったのは「前と同じ選び方」のまま始めようとしていたことだったんだ。

二度目に変えた、2つのこと

相談を聞いた担当の方は、同じ選び方をもう一度なぞれば、また同じ場所でつまずくと気づき、2つを変えることにしました。

1つ目は、最初に選ぶ業務です。前回は、お客様に直接届く目立つ業務を選びました。今回は逆に、社内向けで多少ズレても外に出ない小さな業務——社内会議の議事録の下書きを1本選びました。目立たない代わりに、間違えてもやり直しがききます。

マル

目立たない仕事を選ぶのって、地味に思われない?

タイガー

地味でいいんだよ。派手さより、「間違えても取り返せる」ことのほうが、二度目には効くから。

2つ目は、言い出す人です。前回は経営側が号令をかける形で始まりました。今回は、以前は距離を置いて見ていた担当者自身が「これなら自分の持ち場で試してみたい」と手を挙げる形にしました。決めたのが自分なら、うまくいかなかったときも「やらされた」にはなりません。

1回目

  • 社外向けの目立つ業務を選ぶ
  • 経営側が号令をかけて始める
  • 止まった理由は誰も振り返らない

結果:静かに使われなくなった

2回目

  • 社内向けの、やり直しがきく小さな業務を選ぶ
  • 以前は様子見だった担当者が自分で手を挙げる
  • 前回何が起きたかを最初に共有する

結果:様子見だった人も手を貸し始めた

変わったのはツールではない。最初に選ぶ業務と、言い出す人の2つだけだった。

21回目と2回目のビフォーアフター。変えたのはツールではなく、最初に選ぶ業務と、言い出す人だった。

「またか」という空気そのものは、すぐには消えませんでした。それでも、前回何が起きたかを隠さずに共有し、今回は業務も進め方も違うと最初に伝えたことで、様子見だった人たちも少しずつ手を貸してくれるようになったといいます。

マル

今度はうまくいきそう?

タイガー

正直、まだ分からない。始まったばかりだからね。ただ、前回と同じ場所でつまずく可能性は、確実に減っていると思う。

Comaruの実務ではこう考えている

Comaruも、一度うまくいかなかったやり方をAIに任せ直すとき、同じ理由づけのまま再挑戦すると同じ場所でつまずく、と実感しています。実務としては、一度止まった作業をもう一度触るときは、必ず「今回は何を変えたか」を1行で言えるかを先に確認するようにしています。変えた点が言えないなら、それはまだ再挑戦の準備ができていない合図です。

マル

「変えた点が言えない」って、どういうとき?

タイガー

「今度はちゃんとやります」としか言えないときだね。それは気合の話であって、進め方の話になっていないんだ。

一度やめたAIを、もう一度始める前に

  • 「前回が間違いだった」と決めつけず、当時の判断には理由があったと認めるところから始める
  • 変えるのはツールではなく、最初に選ぶ業務(目立つ仕事→やり直しがきく小さな仕事)と、言い出す人
  • 「またか」という空気は、何が起きたかを隠さず共有することで少しずつ薄まっていく

まとめ:変えるのはツールではなく、最初の一手

一度AIをやめた会社が、もう一度始めるとき、つい新しいツールや高機能なプランに目が向きがちです。けれど、今回の相談で実際に効いたのは、ツールの入れ替えではありませんでした。最初に選ぶ業務を、目立つものから、やり直しがきく小さなものへ変える。そして言い出す人を、経営側から現場の当事者へ変える。この2つだけでした。

「前回はなぜ失敗したのか」を犯人探しのように振り返る必要はありません。当時の判断には、当時なりの理由があったはずです。大事なのは、その理由を否定せずに認めたうえで、今回は何を変えるかを1つでも言えるようにしておくことです。

最初の挑戦でつまずきやすいパターンは中小企業のAI導入が失敗する5つの型に、そもそもの始め方は中小企業のAI活用、何から始めればいい?にまとめています。今回のように「誰が言い出すか」で迷ったら、AI導入は誰が担当する?もあわせてご覧ください。

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