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AIで浮いた時間、どう数える?——胡散臭くならない時短の測り方

こんにちは、コマルです。先に結論を書きます。「AIで浮いた時間」を数字にするなら、いちばん信用されるのは地味で手間もかかる「作業時間の前後比較」です。逆に、いちばんよく見かけるのに、いちばん危ないのが、何も測らずに大きな数字だけを掲げる「測らない」というやり方です。今日は、時短効果を語るための4つの測り方を並べて、向き不向きと、ごまかしが入りやすいポイントを整理します。

「AI導入で年間500時間削減」「業務時間を50%削減」——検索すると、こういう見出しをよく見かけます。ただ、大きな数字を見たとき、「本当に?」と身構えたことはありませんか。理由ははっきりしています。比較の基準になる「導入前」の時間を、実際には計っていないことが多いからです。感覚で「だいたい3時間かかっていた気がする」と見積もった数字は、実際にストップウォッチで測った数字より大きく出がちです。根拠を聞かれて答えられない数字は、盛っていなくても盛って見えます。

大きく見せる数字には、だいたい共通の型があります。数字を出す前に、次の3つに当てはまっていないか確認してみてください。

  • 比較の基準(導入前の時間)を決めていない
  • いちばん効果が出た1回だけを取り上げている
  • 性質の違う複数の作業をまとめて1つの数字にしている

マル

うちも「AIで時短できました」って言いたいんだけど、何を測ればそれっぽくなるの?

タイガー

「それっぽく」を狙うと、だいたい失敗するよ。狙うのは"それっぽさ"じゃなくて、聞かれたときに測り方を説明できるかどうか。測り方には向き不向きがあるから、まず4つを並べて見比べてみよう。
①作業時間の前後比較
向いている場面定型作業(見積作成・議事録など)の繰り返し業務
ごまかしが入りやすい点導入前の時間を「体感」で大きめに見積もる
信頼されやすさ:高い
②件数×単価
向いている場面処理件数を数えやすい業務(問い合わせ対応など)
ごまかしが入りやすい点単価を都合よく高くする/関わっていない件数まで数える
信頼されやすさ:
③体感アンケート
向いている場面数字にしにくい仕事・定着度を見たいとき
ごまかしが入りやすい点聞き方で答えが誘導される/良いと言わせる空気ができる
信頼されやすさ:低い(単独では)
④測らない
向いている場面社内の感想として話すだけのとき
ごまかしが入りやすい点そのまま「年間◯時間削減」と数字だけが独り歩きする
信頼されやすさ:なし
1時短効果を数字にする4つの測り方の比較。向いている場面・ごまかしが入りやすい点・数字としての信頼されやすさをまとめた。

①作業時間の前後比較——手間はかかるが、いちばん疑われにくい

同じ作業を、導入前後で実際に時間を計って比べる方法です。「見積書を1件作るのに、前は40分かかっていたが、AIに下書きを作らせるようになって15分になった」というように、特定の1つの作業に絞って比較します。

いちばんの弱点は、導入前に測っておく必要があることです。「そういえば時短できてるかも」と気づいてから慌てて測っても、比較する相手(導入前の時間)がもうありません。今から使い始める業務があるなら、使う前に一度、今の時間を計っておくのが安全です。

たとえば「見積書1件40分→15分」なら、月20件作るとして、単純計算で月8時間ほど浮いた計算になります。この「単純計算で」の一言を惜しまないことが、数字を信用してもらうコツです。

マル

えっ、うちもう半年前からAIで見積書作ってる……導入前の時間、もう覚えてないよ。

タイガー

正確な数字は無理でも大丈夫。今から似た作業を1つ、AIを使わずに計ってみるんだ。厳密な比較にはならないけど、「今のやり方だとこれくらいかかる」という目安にはなるよ。

②件数×単価——金額に換算できるが、単価の根拠がすべて

処理した件数に、1件あたりの単価(外注費や時給換算)をかけて、金額に換算する方法です。「問い合わせ対応1件を外注すると800円かかるところ、AIが月50件を肩代わりしたので4万円分」というように語れます。対外的な説明資料に向いています。

ただし、この方法は単価の決め方次第でいくらでも大きく見せられる、という弱点を持ちます。高めの外注単価を持ち出したり、「AIが少し関わった件数」まで丸ごと数えてしまったりすると、実態より大きな数字が簡単にできあがります。

件数を数えるときは、AIが最初から最後まで処理した件数だけを対象にするのが安全です。人が手直しした件数まで含めると、数字はふくらみますが根拠が弱くなります。

マル

単価ってどうやって決めるのが公平なの?

タイガー

実際に払っている外注費か、社内の時給換算——どちらか一方に決めて、あとで説明を求められても同じ数字で答えられるようにしておくこと。都合に合わせて単価を使い分けるのが、いちばんのごまかしだよ。

③体感アンケート——数字にしにくい仕事に効くが、単独では弱い

「楽になったと感じるか」を、使っている本人に5段階などで聞く方法です。判断や調整が中心で時間を計りにくい業務や、定着しているかどうかを確かめたいときに向いています。

弱点は、聞き方次第で答えが誘導されやすいことです。上司が近くで見ている状態で「良くなりましたよね?」と聞けば、悪いとは言いにくいものです。単独の数字として使うより、①や②を補う「実感の裏付け」として添えるのが安全な使い方です。

聞くタイミングにも注意が要ります。導入直後の物珍しさがある時期に聞くと、実際の使い勝手より高めの評価が出やすくなります。1か月ほど使ってから聞くと、実感に近い数字になります。

マル

アンケートって、みんな遠慮して「良い」って答えちゃいそう……。

タイガー

そうなりやすいから、匿名で答えられるようにする、集計は本人の前でしない、といった工夫が要る。それでも単独では弱い数字だと割り切って使うのが実務的だよ。

④測らない——実はいちばん多い。そしていちばん危ない

何も測らず、「かなり楽になった気がする」という印象だけで語る方法です。これは測り方というより「測っていない」状態ですが、実際にいちばんよく出会う型でもあります。

危ないのは、この印象がそのまま「年間◯◯時間削減」という具体的な数字に化けることです。根拠になる測定が1つもないまま数字だけが独り歩きすると、あとで「その数字の根拠は?」と聞かれたときに答えられません。

測らない型が多いのは、悪気があるからではありません。忙しい中で、いちばん手間がかからないから選ばれがちなだけです。だからこそ、忙しいときほど①の簡易版(時刻をメモするだけ)を使うのが現実的です。

マル

じゃあ「なんとなく楽になった」って言うだけでも、社内で話すだけなら別にいいんじゃないの?

タイガー

社内の雑談ならそれでいい。危ないのは、その「なんとなく」がいつの間にか「年間◯時間削減」という具体的な数字に化けること。印象と数字のあいだには、必ず測定を挟む——ここだけは崩さないでほしいな。

4つの測り方、使うときの前提

  • ①作業時間の前後比較:導入前に一度計っておく(後からでは比較相手がない)
  • ②件数×単価:単価の決め方を先に固定し、あとから変えない
  • ③体感アンケート:単独では使わず、他の測り方の裏付けとして添える
  • ④測らない:社内の感想にとどめ、外向けの数字としては使わない

あなたはこれ——状況別のおすすめ

補助金の申請や取引先への説明など、対外的に数字が要る場面では、①作業時間の前後比較を軸にして、必要なら②で金額換算を添えるのが手堅い進め方です。①は手間がかかりますが、聞かれたときに「この作業をこう計りました」とそのまま答えられる強さがあります。

判断や調整が中心で時間を計りにくい業務、あるいは社内での定着ぶりを見たい場合は、③体感アンケートを補助的に使います。単独の数字として押し出さず、①や②の結果に添える形にすると信頼度が上がります。

そして、まだ何も測っていない場合は、④のまま数字を語らないこと。焦って大きな数字を出す必要はありません。今からでも、直近で使い始めた1つの作業を①で計るところから始めれば十分です。次の3つのうち2つ以上に当てはまるなら、①を主軸にするのがおすすめです。

  • 対外的な説明や申請に数字を使う予定がある
  • 繰り返し行う定型作業がある
  • 「いつ聞かれてもいいように」しておきたい

Comaruの実務ではこう測っている

一次情報として示せる統一基準があるわけではありませんが、Comaruでは記事執筆や経理入力など、日常的に繰り返す作業について、AIを使う前と後で作業時間をメモに残す、という簡単な①の運用をしています。厳密なストップウォッチ計測ではなく、開始と終了の時刻を記録する程度ですが、「体感」だけに頼るよりずっと説明しやすい数字になります。

マル

それって毎回ちゃんとやってるの?面倒じゃない?

タイガー

全部の作業でやってるわけじゃないよ。繰り返す頻度が高い作業だけ、最初の数回だけ記録する。傾向がつかめたら、あとは同じペースで続いているかをたまに確認するくらいで十分なんだ。

まとめ:数字は「測り方まで含めて」語る

「AIで浮いた時間」を語るとき、大事なのは数字の大きさではなく、その数字がどう測られたかを説明できるかです。①作業時間の前後比較はいちばん手堅く、②件数×単価は金額換算に向くぶん単価の根拠が問われ、③体感アンケートは補助として使うのが安全、④測らないまま数字だけを語るのがいちばん危険——この違いを知っているだけで、出す数字の説得力は変わります。

大きな数字を先に決めて、それに合う測り方を後から探すのは順番が逆です。まず測り方を決め、その結果として出てきた数字を、そのまま伝える。地味に見えて、これがいちばん胡散臭くならない進め方です。

最初の30日で何を確認するかは社内にAIを入れる最初の30日、まだ測る対象の業務が決まっていない場合は中小企業のAI活用、何から始めればいい?、小さく始めた実例は属人化した業務を1つだけAIで楽にする事例集にまとめています。

30分無料相談では、「うちの場合はどの測り方が向いているか」「今から始めるならどこから記録すればいいか」を、実際の業務に合わせて一緒に整理できます。数字の作り方に迷っている方は、お気軽にどうぞ。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。