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ベテランの頭の中をAIで手順書にする、聞き出し方のコツ

こんにちは、コマルです。「ベテランの担当者にしかできない仕事があって、何度もマニュアル化を頼んだけど、結局できあがらない」——総務担当や社長から、こんな相談をよく受けます。担当者に悪気があるわけではなく、頼み方そのものに理由があります。

マル

それって、文章を書くのが苦手な人が多いってこと?

タイガー

実はそうとも限らないんだ。むしろ逆で、その仕事を長くやっている人ほど書けないことが多い。理由は文章力じゃなくて、もっと手前にある。

マル

手前……?

タイガー

本人が、自分のやっている手順を言葉にできていないんだよ。長く続けているうちに判断が体に染みついて「考えなくてもできる」状態になる。でもそれは、他人に説明できる状態とは別物なんだ。

マニュアルが書けない、本当の理由

長年ひとりで担ってきた業務ほど、この現象が起きやすいものです。作業は速くて正確なのに、いざ手順を書き出そうとすると手が止まる——それは怠けているのではなく、体で覚えたことを言葉に変換する作業自体が、別のスキルだからです。

マル

確かに、私も慣れた作業だと「なんとなく」でやっちゃうことあるかも。

タイガー

それそれ。「なんとなく」の中に、実は細かい判断がいくつも入ってる。「この書類は急ぎかどうか、パッと見て分かる」——これも立派なノウハウなんだけど、本人は「見れば分かる」としか説明できない。

マル

じゃあ、どうやって引き出せばいいの?

タイガー

白紙に「書いて」と頼むから止まるんだ。書かせるんじゃなくて、聞き出す。AIを、文章を書かせる相手じゃなく、質問してくる聞き役として使うんだよ。

マニュアルが止まる本当の理由

  • 原因は文章力ではなく、本人が手順を言葉にできていないこと
  • 慣れた作業ほど「なんとなく」の中に細かい判断が隠れている
  • 「書いて」と頼むより「聞き出す」ほうが、言語化が進む

AIを「書かせる」のではなく「聞き役」にする

聞き出すといっても、特別な技術は要りません。ポイントは、AIの役割を「書く人」から「質問する人」に変えることだけです。いきなり「マニュアルを書いて」と頼むと、AIは断片的な情報からもっともらしい文章を作ってしまい、抜け漏れに気づけません。先に聞き役として動いてもらうほうが、実際の判断や例外まで拾えます。

マル

聞き役って、具体的にはどうやるの?

タイガー

流れは5つ。まず実際に作業をしながら、口に出してもらって録音する。次にその音声を文字起こしする。それをAIに渡して、「聞き役として、分からないところを質問して」と頼むんだ。
1
人実況しながら録音する作業をしながら、頭の中をそのまま声に出す
2
AI文字起こしする録音した音声をテキストに変換する
3
AI聞き役として質問させる例外・判断根拠・つまずきどころを掘り下げて聞く
4
AI回答を要点に整理する時系列の会話を、箇条書きの要点にまとめる
5
人+AI手順書の形に整える番号つき手順・注意点・例外の様式に整形し、人が最終確認する
図1聞き出しから手順書になるまでの5ステップ。AIは「書く係」ではなく「質問する係」として入る。

マル

録音するときは、何を話せばいいの?

タイガー

手を止めずに、頭の中をそのまま実況してもらうのがコツ。「今、この書類の日付を見てる。もし今日が締切だったら、先に電話する」みたいにね。台本もメモも要らない、いつも通りの作業をしゃべりながらやるだけでいい。

マル

それだけでいいんだ。もっと構えて準備しなきゃいけないと思ってた。

タイガー

身構えるほど、逆に言葉が出なくなるんだよ。録音アプリと、無料の文字起こし機能があれば十分。特別な道具は要らない。

聞き役として使うときの基本

  • 録音は実況形式。台本やメモは不要で、いつも通りの作業をしゃべりながら行う
  • 文字起こしのあと、AIに「質問する係」として動いてもらう
  • 特別な道具は不要。録音アプリと文字起こし機能があれば始められる

聞き出す質問には「型」がある

ここで差がつくのは、AIへの指示の中身です。ただ「質問して」とだけ頼むのと、効く質問の型をあらかじめ教えて頼むのとでは、返ってくる深さがまるで違います。中小企業の現場でよく効く型を、5つに絞って紹介します。

マル

AIに「質問して」ってお願いするだけで、うまく聞き出せるの?

タイガー

丸投げだと、当たり障りのない質問しか返ってこないことが多いんだ。聞き出す質問には、効く型がある。これをAIへの指示に含めておくと、深掘りの精度がぐっと上がる。
例外を聞く「いつもと違う対応をするのは、どんな時ですか?」
新人のつまずきを聞く「新しく入った人が、最初にやりがちな間違いは何ですか?」
判断の根拠を聞く「今、何を見てその判断をしましたか?」
不在時の穴を聞く「あなたが1週間休んだら、代わりの人は何に困りますか?」
あいまい語を聞く「「だいたいこんな感じ」で済ませている部分はどこですか?」
図2暗黙知を引き出すのに効く、質問の型の例。この5つをAIへの指示に含めると、深掘りの質が上がる。

マル

「例外はいつ起きる?」って、よく聞くやつだ。

タイガー

これが一番効く型だよ。普段どおりの手順は、実はマニュアルの半分でしかない。事故を防ぐのは、むしろ「いつもと違う時どうするか」の部分だからね。

マル

「新人が最初に間違えるのは?」も型のひとつなんだね。

タイガー

そう。ベテランは自分がつまずいた記憶を忘れてる。でも「新人が」と聞くと、過去の失敗の記憶がふっと戻ってくることが多いんだ。主語を変えるだけで、出てくる答えが変わるんだよ。

聞き出す質問の型(例)

  • 例外はいつ起きる?——「いつもどおり」の外側にこそノウハウがある
  • 新人が最初に間違えるのは?——主語を変えると忘れていた記憶が戻る
  • 今、何を見てその判断をした?——「見れば分かる」を言葉にする質問
  • あなたが1週間休んだら、代わりの人は何に困る?——不在時の穴を洗い出す

「渡したくない」という気持ちにも向き合う

どれだけ質問の型が良くても、答える本人の気持ちが乗っていなければ、言葉は思うように出てきません。聞き出す作業がうまく進まないとき、原因は質問の仕方より、聞かれる本人の心理にあることが少なくないのです。

マル

でも、正直に聞かれて答えたくない人もいそう……。自分の仕事が要らなくなるみたいで。

タイガー

それ、実際によくある反応なんだ。マニュアル化を「自分の価値がなくなること」だと感じてしまう人は少なくない。「AIに仕事を奪われる」と反対する社員に、何を話せばいいかでも触れたけど、AIそのものへの不安と根っこは同じなんだよ。

マル

じゃあ、どう声をかければいいの?

タイガー

「あなたの仕事を無くすためじゃなく、あなたにしかできない判断を、会社の共有財産にするため」——そう伝えるといいよ。マニュアル化された後も、例外対応や最終判断は、結局その人にしか頼めないことが多いからね。

聞き出す相手の不安への向き合い方

  • マニュアル化を「自分の価値がなくなること」と感じる人は少なくない
  • 目的は仕事を奪うことではなく、判断を会社の共有財産にすること
  • 例外対応や最終判断は、マニュアル化後もその人にしか頼めないことが多いと伝える

聞き出した言葉を、手順書に整える2段階

聞き出した答えが集まっても、そのままでは手順書になりません。会話の順番はバラバラですし、余談も混ざっています。ここにも、押さえておきたい進め方の順番があります。

マル

質問して答えをもらったあと、どうやって手順書にするの?

タイガー

ここも一気にやらない。2段階に分けるんだ。1段階目は、文字起こしの生の会話をAIに渡して、時系列の話を箇条書きの要点にまとめてもらう。2段階目は、その箇条書きを渡して、番号つきの手順・注意点・例外という手順書の形式に整えてもらう。

マル

一気に手順書にしちゃダメなの?

タイガー

一気にやると、AIが会話の中の余談まで手順に混ぜ込んだり、逆に大事な例外を落としたりしやすいんだ。要点への整理と、様式への整形を分けると、途中で「ここ違う」と直しやすくなる。

手順書に整える2段階

  • 1段階目:生の文字起こし→時系列の話を箇条書きの要点にまとめる
  • 2段階目:箇条書き→番号つき手順・注意点・例外という様式に整形する
  • 一気にやらず分けると、途中で内容の確認・修正がしやすい

Comaruの実務ではこう進めている

この進め方について、公的な統計やガイドラインは見当たりませんでした。マニュアルの作り方は業種や会社ごとに事情が違い、一律の「正解」を示す一次情報自体が存在しにくい領域です。そのため、ここから先はComaruが実際の案件で行っている手順として、正直にお伝えします。

マル

Comaruでは、実際どうやってるの?

タイガー

30分程度の実況録音を1回もらったら、まずAIに「聞き役として、この作業の例外・判断根拠・新人のつまずきどころを掘り下げる質問を10個作って」と頼む。それを本人に答えてもらって、また文字起こし。それから2段階の整形に進むよ。

マル

1回のやり取りで終わらせようとしないんだね。

タイガー

そう。1往復で終わる前提にしないことが、実はいちばんのコツかもしれない。最初の答えは大体、まだ「なんとなく」が残ってる。もう一段掘り下げて、ようやく言葉になる感覚だよ。

まとめ:文章力ではなく、聞き出し方の問題

ベテランの頭の中にある手順は、書けないのではなく、まだ言葉になっていないだけです。AIに「書いて」と頼むのではなく、実況の録音と文字起こしを土台に、AIを聞き役にして質問してもらう——この順番に変えるだけで、止まっていたマニュアル化が動き出すことがあります。

聞き出す質問には型があり、「例外はいつ起きる?」「新人が最初に間違えるのは?」のように主語や場面を変えるだけで、忘れていた判断が言葉になって出てきます。そして、聞き出した言葉は一気に手順書へ変換せず、要点への整理と様式への整形を分けて進めるほうが、確認と修正がしやすくなります。

聞き出す相手が答えたがらないときは、多くの場合、渡すこと自体への不安が理由です。「AIに仕事を奪われる」と反対する社員に、何を話せばいいかで触れた向き合い方は、マニュアル化の場面でもそのまま使えます。小さな自動化から始めたい方は属人化した業務を1つだけAIで楽にする、小さな自動化の事例集、AIへの任せ方全体を設計したい方はAIへの「任せ方」を設計するもあわせてご覧ください。

30分無料相談では、「うちのベテランの仕事をどう言語化すればいいか」「どの業務から手をつければいいか」を、実際の業務に合わせて一緒に整理できます。属人化に悩んでいる方は、お気軽にどうぞ。

この記事は、みなさんの“困る”を解決する猫の手「コマル」がお届けしました。 「うちの場合はどうなる?」は 30分無料相談 でどうぞ。